「虐められたとき、自分のこと、否定されたって思わなかった?」
「否定?」
「間違ってたら、ごめんね。もしかして一緒かなって思って。
ハローくんも私みたいに誰かに自分を否定されて、生きてていいのかなって。
自分なんてどうでもいいのかなって、独りかなって思ったのかなって、想像しちゃって」
「……」
「だからハローくんは、喧嘩ばかりするのかなって」
「なんでそんなこと言うの」
「なんでだろうね。わかんない。もしかしたら、今、私が少し淋しいのかもしれないね」

明るいトーンで話しているが、彼女の心細さが伝わってくる。

そうすると普段は意識しないでいた虐められていた頃の感覚が蘇ってきて、手が震えた。ギュッと拳をつくり落ち着ける。

そもそも幼い頃から周りに女みたいだとからかわれ仲間に入れてもらえなかったり、母親も忙しそうで家でも一人で過ごすことが多く常に居場所はないように感じていた。
誰も自分のことなど必要としてくれないとさえ思っていた。
年を重ねるにつれ、その孤独というものは薄れてたいったようにも感じているけど、
彼女の心細さを自分のことのように今、感じているということは同じような感情が自分の中にもまだ残っているのかもしれない。

ふと彼女を抱きしめたくなったけど、自分のためにするようで止めた。

それから喧嘩のことを気にしている彼女はきっと今も、喧嘩をすることを許していないのだと思う。