「死神、何かあったのか?」


野バラが少し不安そうにこちらを見る。


「…あぁ、龍神がこっちに来てるらしい。」



「…あっ。」



俺が言うと、

野バラの顔がだんだんと青くなってきた。



「…野バラ、お前何かあいつらに言ったな?」



「ご、ごめん!

早く死神に会いたくてけしかけたんだ!

結構前の事だから忘れてた!」



カマをかけると直ぐに吐いた。



「…。

はぁ、そうか。」



今日はもう野バラと散歩は切り上げか。

そう思うと自然にため息がでた。



「ほんとごめん!

代わりに俺が死神を何としてでも逃がすから!」



ね?と野バラが泣きそうに、

手を顔の前で合わせている。



「野バラ。」



「うっ。ごめん!」



俺は下を向いた頭を撫でる。



「へ?」



野バラが間抜けた顔になった。



「野バラ、

俺がそんなことで怒ると思ってるのか?」



「え、でも、死神困ってる顔してたし…?」



「あぁ、確かに困った。」



「やっぱり、ご( 」


謝ろうとしたのを遮り俺が喋る。



「今日はこれ以上、

野バラと一緒に居られないから。」



「俺と…、」


それまで泣きそうだった野バラの顔が、

キョトンとしたものに変わった。



「あぁ、これから龍神に逢いに行くから。

まぁ約束してたし、いいタイミングだろ。」



「じゃあ、俺の事怒ってない…?」


涙が溜まった目で俺を見る。


「当たり前だろ。


ていうか、

俺がそんなに器の小さい奴と思ってたのか?」



「ちっ、違う!死神は器の大きい優しい奴だ!」


野バラが急いで訂正する。


「ん、ならいい。


…さ、野バラは帰れ。

まだあいつらには言ってないんだろ?」



「…うん。」


野バラが寂しそうに、困ったような顔をする。



「大丈夫だ。」



「死神…、


おう、わかった…!

じゃあまたな!」



俺が笑って見せると安心したように笑顔に戻った。



「あぁ、またな。」



野バラは乗ってきたバイクで帰って行った。



さぁ、俺も行くか。