俺は店の前に来ると、
一つのネックレスに見入った。
バラのネックレス、
強く、深い赤い色をしている。
俺はこれだと思い店に入る。
チリーン
「いらっしゃい。」
窓を開けると音が鳴った。
鳴った後、声が聞こえた。
その方へ視線を向けると、
そこには優しそうなおじいさんが、
笑顔で座っていた。
「あの、あそこに飾ってあるネックレスを買いたいんですが。」
おじいさんは、
どれかな?と俺が指さした方に歩いていった。
「これです。」
おじいさんの顔が少し寂しそうに笑った。
「そうか、これが欲しいのか。
…
これは、プレゼントかい?」
「はい。」
「好きな人へかい?」
「…好きな人、とは違います。
俺はその子が大事で、守りたいんです。」
「ふむ…。」
おじいさんは少し考えてから俺にそれを渡した。
「これはね、私の娘のために作ったんだ。」
「娘さん?」
「あぁ、もう何十年も前だ。
事故で妻と一緒に亡くなってしまってな。
その日は娘の誕生日で、
これをあげる予定だった。
…これを見つけて、
娘がここに来てくれるかもしれない、
そう思って飾っていたんだ。
でも、もう潮時だろう。」
おじいさんは苦しそうに笑う。
「あの、
良かったらその話、
もっと聞いてもいいですか?」
おじいさんは少し驚いたが、
次には笑顔になり、奥へ通された。