夜月迅逮捕から数日経ったが、
依然夜月迅は黙秘しているようだった。
柊によると、
質問には一切答えず、
抜け殻のようだと聞いた。
俺はそれを聞き、
面会の許可を申請した。
そして、
今日が面会日であり、
今まさに、
夜月迅が部屋に入ってくるのを待っている。
暫くすると、
ドアを叩く音がした。
中にいる監視官がドアを開けて、
警察が入ってくる。
その後ろには、
夜月迅がいる。
夜月迅が座ると、
「では、面会を開始します。」
監視官が言う。
「…。」
夜月迅は喋らない。
「お久しぶりです、夜月迅さん。
神夜真です。」
「…。」
何も喋らない。
それに、ずっと下を向いている。
「…詩笑さん。」
「っ…。」
反応があった。
「俺は詩笑さんから、あることを頼まれました。」
先程まで下を向いていた夜月迅がこちらを向く。
「貴方と詩音さんを、守ってくれと。」
「守る?
じゃあなんで俺達の会社が潰れた?!
俺と詩笑が苦労して起てたんだ!
それをなぜ!」
感情をあらわにし暴れる。
が、監視官に止められる。
「詩笑さんはこんなこと望んでいません。
それに、
貴方と、“詩音さんを”、と頼まれました。
今の貴方は、
詩音さんを傷つけることしかしていない。」
「そうだ、あいつだ!
あいつなんて、
あの時死んでいればよかったんだ。
なんであの時詩笑は庇ったりしたんだ。
あのまま逃げていればっ…!」
バンッ!
俺は台を叩いた。
「…詩音を、詩笑さんは守った。
自分が産んだ、大切な子だから。
大切な貴方との子供だから。
そして詩笑さんは、詩音を守り抜いた。
…詩笑さんの最後の顔、覚えていますか?
俺は、覚えています。
凄く安らかに、穏やかに笑って眠っていました。
…ここまで言えば、分かりますよね?
貴方は今、詩笑さんが守った大切な子を、
傷つけているんです。
これで詩笑さんが、笑っていると思いますか?
今の詩笑さんの気持ちを、考えてください。」
俺は、詩音の笑顔を思い出す。
「…頼むから。
詩音を、
心から笑顔にしてくれ。
それを出来るのは、
あんたしかいないんだ!」
俺はそう言うとすぐに帰った。
後ろで泣き声が聞こえた。
詩音はそれ以上に苦しかったんだ。
これから、生きて罪を償え。
俺に出来ることは、
夜月の会社の雇用者を、
別の会社に転職できるようにすること。
そして、
社会的責任と、
親の担うはずの行為をしなかった罪を、
償うように仕向けることだ。
あとは、あんたがどうするかだ。
俺は詩音のために、
あんたに力を貸してやる。
だから頼む。
詩音を安心させてくれ、笑わせてくれ。
そう思いながら、俺は帰路に着いた。