「その盃ちょっとまった!」
東堂が勢いよく松原の横に座る。
「若!私とも親子の盃を交わしてください!」
東堂が頭を下げる。
「東堂。」
「真、お前が決めろ。」
じいちゃんは静かに言う。
「はい。
…東堂。
親子の盃が、どんなものかは知っているな?」
「はい!」
「逃げ出したいほど辛いことがあるし、
いつ死ぬかわからない。
大切な何かを見つけても、守れない時がある。
それが組だ。
それでも、俺と盃交わすか?」
盃を交わしてしまえば、
堅気に戻ることは難しい、
否、無いに等しい。
「…、
俺は!
高校出てからすぐに神夜組に入りました!
最初は憧れだけで入りました!
…けどっ!
ずっとここに居るにつれて、
友達もっ!仲間もっ!
家族とも言える人達に出会いましたっ!
そして!
一生を捧げたいと思える!
貴方に!
若に出会いました!
俺はまだまだ弱くてっ、
至らないところばかりです!
けど、そんな俺を見捨てず、
助けてくださいました!
私はっ!貴方へついていきたい!
貴方の進む人生を!
私も見たい!
お願いします!
私と!親子の盃を交わしてください!」
東堂は泣きながら、
でも、
俺の目を見てそう答えた。
こんだけ言われたら、断る理由はねぇ。
「東堂。
…盃を出せ。」
東堂は力強く頷く。
自分の盃を懐から出す。
「では、子分になる者。」
「「はい!」」
うちの親子の盃は独自の規定がある。
それはじいちゃんが作ったそうだ。
簡潔でわかりやすい、
でも、行動するのは難しい。
「子分とは、
親の言うことは絶対だ。
そして、
いつ如何なる時も親に忠誠をし、
その命を投げ出す覚悟でいること。
これを守れる者は盃を持て。」
二人とも盃を持つ。
「親分なる者。」
「はい。」
「親分とは、
子に自分の後ろを任すこと。
そして、
子の命を預かる身。
その覚悟があるものは、酒を持て。」
俺は酒を持つ。