本家に戻ると、松原と東堂が外で出迎えていた。
「いつも外で待たなくてもいいんだぞ。」
「若のお帰りなんですから出てないと。」
松原は胸を張り、ニコッと笑った。
「ふっ、そうか。」
「松原さん!そんなことより若の手当を!」
ずっとソワソワしていた東堂が、
ここぞとばかりに言い放つ。
「ほぉ、若に怪我を…。」
松原の顔が般若の顔に変わる。
「ひぃっ、」
「…まぁ、罰は後にしておこうか。
若、こちらへ。」
松原の顔が普段の優しい顔に戻る。
が、
東堂達の顔は青くなるばかりだった。
「あぁ。」
俺は松原に促されるままに家に入る。
松原が救急箱を出し、処置してくれる。
「…若、お見事です。」
松原がホッとした顔をしながら言う。
松原も、東堂達の事が気になっていたのだろう。
「あぁ。
…そうだ、
機会をくれたじいちゃんに、お礼言わないとな。」
「組長はなんでもお見通しですからね。
多分、
こうなる事も全部わかってましたね。」
「多分な。
…そう言えば、
俺が怪我したから、
完全勝利じゃなかったな。」
処置が終わり、
片付けも終わる。
すると、
松原が真剣な顔つきになり、頭を下げた。
「…どうした。」
松原は暫くしてから、俺を見て話し出した。
「…若は本当に、お強くなりました。
…私は、若の小さい頃から見ていたものですから、
まだ小さい子どもの感覚でした。
申し訳ありませんでした。
今を持って、その考えを全て捨てます。
今回の件でも、前回の件でも、
私の予想を遥かに上回る事を成し遂げられました。
そして、
立ち振る舞いも落ち着いていて、
それでいて、
頼っても大丈夫。
そう思わすその雰囲気。
私は、
今の若に、惚れ込みました。
若、
私松原は、
この命尽きるまで、
誠心誠意、若に仕えることを誓います。」
松原…。
うん。
「松原。
…盃、交わすぞ。」
松原がその言葉に反応し顔を上げる。
そして、
俺の真剣な目を見る。
「…っ、
…若、これからよろしくお願い致します。」
松原が頭を下げる。
俺は、
土下座とか、
頭を下げさせるのが好きじゃない。
だが、
今は悪くない気持ちだ。