今は氷鬼の倉庫の近く。
いよいよ今日が氷鬼との戦いの日。
詩音の母、
詩笑(しえみ)さんを殺した矢武(やたけ)が総長をしている。
あの日から、詩音の笑顔が消えた。
俺もあの頃はまだまだ弱くて、
遠くから見守ることしか出来なかった。
でも今は、今の俺なら、
矢武に罪を償わせる事が出来る。
俺はもう一度気合を入れる。
組員達も、真剣な顔をしている。
あぁ、これなら勝てる。
「…行くぞ。」
俺がそう言うと全員動き出した。
車やバイクで倉庫へ向かう。
倉庫の前には氷鬼の連中がたむろしていた。
その数およそ二百人。
ほとんどが倉庫に入らず外に出ている。
俺達が着くなり喧嘩が始まった。
『うぉぉぉぉぉぉ!!』
氷鬼は全員何かしらの武器を持って戦う。
俺達は丸腰。
普通俺達の方が圧倒的に不利だ。
だが流石うちの組員、
攻撃をものともせず倒していく。
俺の方も喧嘩しながら、
組員の癖を見つけていく。
戦う前に、ある程度配置を決めていた。
だがやっぱりその時になると、
やりにくくなることがある。
その都度、
状況を見て変えなければならない。
草間は左側で戦った方がやりやすそうだ。
北野はまだ得意な方がわからないか。
「北野!草間!場所交代だ!」
「「はい!」」
二人は息を合わせて場所を変わる。
こいつらはじいちゃんが大好きで、
辞めて欲しくなくて反発している。
そんな、可愛い奴らだ。
問題は後の奴らだ、
どうするかな。
考えている間にも、
状況は着々と進んでいく。
今までは圧倒的に倒していた組員達だが、
戦況が少し変わった。
ちらほらナイフや短刀を持っているやつが出てきた。
東堂は刃物が苦手みたいだな。
俺の所に移動させるか。
「東堂!俺と交代だ!」
東堂は無視して戦い続ける。
やっぱり無理か。
そうこうしてる間にも東堂に攻撃がくる。
ナイフが東堂に突き出される。
東堂は大きく避ける。
今度は二方向から、
東堂が後ろに下がる。
危なっかしい。
けどこれも俺が、
こいつらを安心させる事が出来ていないからだ。
暫くそのままで戦っていると、
東堂の死角から、ナイフが伸びてきていることに気づく。