部屋に入ると、
異様な空気に違和感を覚えた。
これは、睡眠薬?!
「ようこそおいでくださった。」
目の前には、
ガスマスクのつけた高木組組長がいた。
「さぁ、少しお話しようか。」
俺は部屋から出ようとする。
が、開かない。
「開きませんよ?
私直属の暗部部隊がいますからな!
はっはっはっはっ!」
「くそっ…、」
俺は片手で体を支えながら、
扉にもたれかかる。
「天下の死神様が情けないですね〜
でも仕方ない!
私の方が知恵で優ったのだから!
はっはっはっはっはっはっはっ!」
俺は屈んで下を向いた。
そんな俺を見て、
高木は俺に背を向けた。
「さぁ!これで厄介なものはいなくなった!
これからは私の時代だ!
そうだな〜、
手始めに死神を使って、
金儲けでもさせてもらうか!
はっはっはっはっはっはっはっ!」
「へー、どんなことするんだ?」
「そうだな!
まず見世物に………は?」
バキッ
「ガハッ」
俺の一発で飛んだ高木は、
ぼよーんとでも聞こえてくるような、
見事なバウンドを見せてくれた。
「終了。」
ガチャ。
「お疲れ様です。若。」
後ろからうちの組員が返事をする。
「あぁ。ありがとう。
でも今回一番活躍したのは松原、お前だ。
一年よくやり遂げてくれた。
ありがとう。」
「…組長と若のためならなんでもしますよ。」
にっこりと笑いながら松原はそう言う。
今回の計画。
この組員、松原が潜入捜査をしてくれていた。
松原のお陰で、
高木組の状況をいち早く掴めた。
そして、
先の睡眠薬も打ち合わせ通り、
本当は何も部屋に撒かれていなかった。
この一年で松原が高木の信用をとり、
自分で行動できるようになっていた。
そして、
最後の砦として置かれていた。
この計画は、松原無しでは成せなかった。
後片付けが終わったら、
みんなと一緒に盛大に祝ってやろう。