「立派な女優になりたいのに、誰目応援してくれないって言って、また泣き出したその子に俺は約束したんだ。なら…」

"僕が応援するよ!!"

ーーーあれは、蓮だったんだ。

あの優しくて力強い彼は、私を安心させてくれた彼は、蓮だったんだ。

蓮はさらに続けた。

「そのあと、ありがとうって言って笑った顔を見てドキッとして、あぁ俺この子が好きなんだって思ったんだ。で、その子がユズさん。今じゃ日本で彼女を知らない人はいないくらいの大物女優。彼女もう一度会いたくて、俺は俳優になったわけ。でも親のコネで有名になんてなっても嬉しくないから、渡辺芽依と鈴木蓮は全くの赤の他人としているんだ。それにありのままの俺に、気づいてほしいから。けど何度会ったって、ユズさんは気づいてはくれないんだ」

そう言って悲しそうに笑う蓮の頬には、一筋の涙が流れていた。

さらに蓮は続けた。

「いや、気づく気づかないの前に俺のことなんて覚えてないかもしれない」

「覚えてるよ」

すかさず私は言った。

「絶対に、覚えてるよ」

あなたは、私の初恋の人なんだよ。

それに、

「それに、あなたに救われた!……と思うよ」

あの日あなたに会えていなかったら、今の私ユズはいないんだよ。

「きっと……感謝してるよ」

本当に心からありがとうって、伝えたい。

「ありがとう」

そんな声が聞こえたかと思うと、次の瞬間。

ギュッと、私は蓮に抱きしめられた。

「今だけ、今だけ抱きしめさせて」

縋るように蓮に抱きつかれながら、私は自分の胸が高鳴るのを感じた。

そしてお昼休みが終わるまで、その状態は続いた。