次の日、学校に着くと階段でも廊下でも"女優・ユズの帰国"の話がどこかしらから聞こえてきた。
昨日の私のあの会見は、生放送されていて瞬間最高視聴率は、30%を越えたらしい。
それはとても喜ばしいことだ。
けれど、クラスの私に対する態度は昨日と変わらず、一つ変化があるとすればひそひそ話が増えたくらいだ。
「どうせアメリカから転校生が来るんなら、あのダサ子じゃなくて、ユズちゃんみたいな美女が良かった」
って、そのユズが私だから!!
ユズを褒められるのは嬉しいけれど、教室に長居したいとは思えず、お昼休みになると足が勝手に、屋上に向かっていた。
屋上に着くと、今日も私は空を見上げた。
どこまでも青く澄んでいる空を見上げた。
「はぁーー」
こんな嫌な思いをするくらいなら、来なければ良かったのかな……??
でも、高校に行ってみたかったし……
「はぁーー」
再び溜息を吐いた。
すると、突然背後から声がした。
「お前、そんなに溜息吐いてばっかだと幸せ逃げちまうぞ」
それは紛れもなく。
「蓮…」
私がこれ以上、関わるまいと決めた蓮だった。
「結月、どうした?元気ねーじゃん」
「そういう蓮は、何かいいことでもあったの?」
「え、何でわかるの?」
「なんか蓮、嬉しそうだし」
声も弾んでて、分かり易すぎる。
これでわからない方がおかしいでしょう。
「それがさ」
蓮は昨日とは違い、明るく語り出した。
「ほら俺、昨日話したじゃん。好きな人がアメリカにいるって」
「うん」
「昨日の放課後にさ、その人と会えたんだ」
「え?」
ちょっと待ってよ……
「しかもさ、俺のこと知ってくれてたんだ」
それってもしかして、
「それに、握手までしてもらったんだ」
あぁ、もしかしなくてもそれは……
「もう俺、嬉しくて嬉しくて。舞い上がっちゃってんだよ」
「それって……」
「あ、ユズさんっていう大女優さんだけど、さすがの結月も聞いたことくらいあるだろ」
もしかしなくても、というか絶対私だ。
「……知ってるよ」
誰よりもね。
「だよな。ユズさんを知らない人はいないよな。日本だけじゃなくて、世界で活躍してる大女優さん」
それから蓮は、永遠とユズについて語り続けた。
「ユズさんはマジスタイルいいし、顔ちっさいしで超可愛いんだよ。しかも演技も半端なくうまくてさー……」
自分のことをここまで褒められるとは…恥ずかしい。
そうして、蓮がユズを褒めちぎるのを約20分間にいた頃、
〜〜♪〜〜♪〜〜♪〜〜
私のケータイが鳴った。
ケータイの画面を見てみると''田中さくら(たなかさくら)さん"と表示されていた。
田中さんは私の、正確にはユズの所属している芸能事務所の社長さんだ。
社長からの電話に、ここで出るわけにはいかない。
「ちょっとごめんね」
蓮にそう言って、私は屋上から室内に戻り電話に出た。
「もしもし、田中さん?」
「ユズー!!日本帰国後の初仕事が、決定したわよ」
「本当ですか!」
やった。早速、仕事をもらえるなんて。
「本当よーっ!1クールのドラマの主演ですって。昨日の会見の視聴率が、かなり高かったおかげかしらねー」
「ありがとうございます」
「早速、今週の土曜日に顔合わせだからよろしくね」
「はい、わかりました」
そう言って、私は電話を切った。
私が電話を終えるのとほぼ同時に、お昼休み終了のチャイムが鳴った。
今日はまだ火曜日だから、土曜日まであと4日もあるけれど、今からとても楽しみだ。
嬉しい知らせのおかげで、午後の授業も休み時間も、頑張れそうだ。
私は急いで教室に向かった。
「おはようございます。伊藤凛(いとうりん)役のユズです。よろしくお願いします」
あの電話をもらってから、あっという間に4日が過ぎ、今日は顔合わせの土曜日。
あんなにも嬉しかったはずなのに今は、あの時のように手放しでは喜べない。
私が主役のこのドラマは、高校生の恋の物語だそうだ。
何事にも控えめでおとなしい女の子・凛と、学校中の人気者だけど、周りとは一定の距離を保つ男の子・湊の甘くて切ない恋物語。
私は今まで、家族愛や友情ものへの出演が多くて、恋愛ものは今回が初めてだ。
それはいい。
新境地を開くことができて、むしろ嬉しい。
けれど、なんで??
なんで相手役が、
「山本湊(やまもとみなと)役の鈴木蓮です」
ーーーなんで蓮なのよ。別に私は、蓮が嫌いなわけではない。
けれど、ドラマで共演するとなるとかなり長い時間、一緒にいることになりユズ=結月だということがバレる可能性が高く鳴ってしまう。
私はこの1週間、結局毎日お昼休みは屋上へ行って、蓮と話をしている。
あの時間は、クラスが居心地の悪い私にとっては手放すことのできない時間となっているから、結月としては、学校で会うことになる。
けれどこのままでは、いつかボロが出ないとも限らない。
まいったな。
顔合わせが終わると、ポスターの撮影だけしてお開きとなった。
「ユズさんにまたお会いできて嬉しいです」
そう蓮が話しかけてきた。
「ありがとう。これからよろしくね」
私はとりあえず、笑顔でそう返した。
あぁ、これからどうしたものか。
波乱のドラマ撮影はまだ、始まったばかり。
昨日の私のあの会見は、生放送されていて瞬間最高視聴率は、30%を越えたらしい。
それはとても喜ばしいことだ。
けれど、クラスの私に対する態度は昨日と変わらず、一つ変化があるとすればひそひそ話が増えたくらいだ。
「どうせアメリカから転校生が来るんなら、あのダサ子じゃなくて、ユズちゃんみたいな美女が良かった」
って、そのユズが私だから!!
ユズを褒められるのは嬉しいけれど、教室に長居したいとは思えず、お昼休みになると足が勝手に、屋上に向かっていた。
屋上に着くと、今日も私は空を見上げた。
どこまでも青く澄んでいる空を見上げた。
「はぁーー」
こんな嫌な思いをするくらいなら、来なければ良かったのかな……??
でも、高校に行ってみたかったし……
「はぁーー」
再び溜息を吐いた。
すると、突然背後から声がした。
「お前、そんなに溜息吐いてばっかだと幸せ逃げちまうぞ」
それは紛れもなく。
「蓮…」
私がこれ以上、関わるまいと決めた蓮だった。
「結月、どうした?元気ねーじゃん」
「そういう蓮は、何かいいことでもあったの?」
「え、何でわかるの?」
「なんか蓮、嬉しそうだし」
声も弾んでて、分かり易すぎる。
これでわからない方がおかしいでしょう。
「それがさ」
蓮は昨日とは違い、明るく語り出した。
「ほら俺、昨日話したじゃん。好きな人がアメリカにいるって」
「うん」
「昨日の放課後にさ、その人と会えたんだ」
「え?」
ちょっと待ってよ……
「しかもさ、俺のこと知ってくれてたんだ」
それってもしかして、
「それに、握手までしてもらったんだ」
あぁ、もしかしなくてもそれは……
「もう俺、嬉しくて嬉しくて。舞い上がっちゃってんだよ」
「それって……」
「あ、ユズさんっていう大女優さんだけど、さすがの結月も聞いたことくらいあるだろ」
もしかしなくても、というか絶対私だ。
「……知ってるよ」
誰よりもね。
「だよな。ユズさんを知らない人はいないよな。日本だけじゃなくて、世界で活躍してる大女優さん」
それから蓮は、永遠とユズについて語り続けた。
「ユズさんはマジスタイルいいし、顔ちっさいしで超可愛いんだよ。しかも演技も半端なくうまくてさー……」
自分のことをここまで褒められるとは…恥ずかしい。
そうして、蓮がユズを褒めちぎるのを約20分間にいた頃、
〜〜♪〜〜♪〜〜♪〜〜
私のケータイが鳴った。
ケータイの画面を見てみると''田中さくら(たなかさくら)さん"と表示されていた。
田中さんは私の、正確にはユズの所属している芸能事務所の社長さんだ。
社長からの電話に、ここで出るわけにはいかない。
「ちょっとごめんね」
蓮にそう言って、私は屋上から室内に戻り電話に出た。
「もしもし、田中さん?」
「ユズー!!日本帰国後の初仕事が、決定したわよ」
「本当ですか!」
やった。早速、仕事をもらえるなんて。
「本当よーっ!1クールのドラマの主演ですって。昨日の会見の視聴率が、かなり高かったおかげかしらねー」
「ありがとうございます」
「早速、今週の土曜日に顔合わせだからよろしくね」
「はい、わかりました」
そう言って、私は電話を切った。
私が電話を終えるのとほぼ同時に、お昼休み終了のチャイムが鳴った。
今日はまだ火曜日だから、土曜日まであと4日もあるけれど、今からとても楽しみだ。
嬉しい知らせのおかげで、午後の授業も休み時間も、頑張れそうだ。
私は急いで教室に向かった。
「おはようございます。伊藤凛(いとうりん)役のユズです。よろしくお願いします」
あの電話をもらってから、あっという間に4日が過ぎ、今日は顔合わせの土曜日。
あんなにも嬉しかったはずなのに今は、あの時のように手放しでは喜べない。
私が主役のこのドラマは、高校生の恋の物語だそうだ。
何事にも控えめでおとなしい女の子・凛と、学校中の人気者だけど、周りとは一定の距離を保つ男の子・湊の甘くて切ない恋物語。
私は今まで、家族愛や友情ものへの出演が多くて、恋愛ものは今回が初めてだ。
それはいい。
新境地を開くことができて、むしろ嬉しい。
けれど、なんで??
なんで相手役が、
「山本湊(やまもとみなと)役の鈴木蓮です」
ーーーなんで蓮なのよ。別に私は、蓮が嫌いなわけではない。
けれど、ドラマで共演するとなるとかなり長い時間、一緒にいることになりユズ=結月だということがバレる可能性が高く鳴ってしまう。
私はこの1週間、結局毎日お昼休みは屋上へ行って、蓮と話をしている。
あの時間は、クラスが居心地の悪い私にとっては手放すことのできない時間となっているから、結月としては、学校で会うことになる。
けれどこのままでは、いつかボロが出ないとも限らない。
まいったな。
顔合わせが終わると、ポスターの撮影だけしてお開きとなった。
「ユズさんにまたお会いできて嬉しいです」
そう蓮が話しかけてきた。
「ありがとう。これからよろしくね」
私はとりあえず、笑顔でそう返した。
あぁ、これからどうしたものか。
波乱のドラマ撮影はまだ、始まったばかり。