〜大翔 Side〜
俺には、一つ下の妹がいる。
名前は結月。
それはそれは可愛くて、可愛くて仕方がない。
もうずーっと昔から、結月は優しいし素直で、純粋無垢。
そんな結月が俺は大好きなんだ。
けれどずーっと昔の俺は、そんな結月が大嫌いだった。
俺は、小さな頃から割となんでもできた。
初めて話したのも、立ったのも歩いたのも、かなり早かったとよく親が言っていた。
そして愛想も良かった俺を、周りの大人たちはもてはやしていたんだ。
けれど、俺が一歳の時に周りの状況は一変した。
結月が生まれたからだ。
結月は俺と比べると、話したり立ったり、歩いたりするのが遅かった。
俺が早すぎただけで、平均的に見たら結月もそれなりだったのに、大人たちは結月を"できの悪い子だ"と言った。
そしてそのできの悪い結月を大人たちは"あなたは物分かりのいい子だから" "お兄ちゃんなんだから"そんな理由をこじつけて、いつも俺に押し付けてきたんだ。
結月はいつも俺の後ろをついてきた。
俺がおもちゃで遊んでいれば、横にちょこんと座って、じーっと見てくる。
俺が本を読んでいても、横にちょこんと座ってじーっと見てくる。
どこへ行ってもじーっと見てくる。
話しかけるなんてことはしないで、ただただ見てくるのだ。
「お前、なんなんだよ」
それが、俺が初めて結月にかけた言葉だった。
「なんでいつもじーっと見てくるんだよ」
結月が3歳、俺が4歳になった時だった。
ずっと長いこと、いつも追いかけてきて隣にくる結月を気にしないようにしていたけれども、仕事も始めたりして疲れも溜まっていた俺は、結月にとうとう耐えられなくなって、イライラしながらまるで八つ当たりのようにそう言った。
「だって、ママたちがお兄ちゃ…」
「お兄ちゃんって呼ぶな」
"お兄ちゃんなんだから"そう言われ続けたことで、お兄ちゃんという言葉にあまり良いイメージを持っていなかった俺は、結月の言葉を遮ってそう言った。
「で?」
俺は、結月に話の続きを促した。
「ママたちがや、大翔を見習えって言うから」
「あのな、だからってじーっと見てくるなよ。それに、見習うってのはずっと見ることじゃないんだよ」
イライラを抑えながら、できる限りの優しい口調で俺は言った。
けれど、意味がよくわからなかったのか結月は、首を横に傾げた。
そんな結月にイライラがピークに達した俺は、
「お前、本当になんなんだよ!いつも見てきて、怖いんだよ!!………お前なんか、大嫌いだ!」
そう結月に怒鳴った。
すると結月は、瞳をウルウルさせながら、
「結月は、大翔のこと好きだよ?」
そう言って笑った。
目をウルウルさせながら笑った顔のまま、結月は自分の部屋へと戻っていった。
「アイツ、本当になんなんだよ」
そう呟きながらも、さすがに言いすぎたんじゃないかと思って、俺は結月の部屋に行くことにした。
どうせ、アイツは何にもわかっていやしないだろうけど、このままじゃ俺の気分が悪い。
そう思いながら、結月の部屋の前に行くと、
「大翔、ごめんね」
そう言いながら結月はすすり泣いていた。
そんな結月に、俺は胸が締め付けられて、すぐに扉を開いて結月の部屋に入った。
扉の音に気づいた結月が、
「えっ?」
そう言葉を発したのとほぼ同時に、俺は結月を抱きしめて、
「さっきはごめんね。結月、俺も結月が大好きだから、泣かないで」
俺は無意識のうちに、そう言っていた。
すると、
「なら私は大翔が大大大好き」
なんて、まだ涙を流しながら結月は言った。
だから俺は、
「俺の方が結月を好きだよ」
「結月の方が好きだもん」
そのあとそんなやりとりを繰り返して、いつの間にか俺の腕の中で眠りについた結月に、俺は兄としてではなく、1人の男として結月を守りたいっていう感情を抱いた。
〜大翔Side End〜
俺には、一つ下の妹がいる。
名前は結月。
それはそれは可愛くて、可愛くて仕方がない。
もうずーっと昔から、結月は優しいし素直で、純粋無垢。
そんな結月が俺は大好きなんだ。
けれどずーっと昔の俺は、そんな結月が大嫌いだった。
俺は、小さな頃から割となんでもできた。
初めて話したのも、立ったのも歩いたのも、かなり早かったとよく親が言っていた。
そして愛想も良かった俺を、周りの大人たちはもてはやしていたんだ。
けれど、俺が一歳の時に周りの状況は一変した。
結月が生まれたからだ。
結月は俺と比べると、話したり立ったり、歩いたりするのが遅かった。
俺が早すぎただけで、平均的に見たら結月もそれなりだったのに、大人たちは結月を"できの悪い子だ"と言った。
そしてそのできの悪い結月を大人たちは"あなたは物分かりのいい子だから" "お兄ちゃんなんだから"そんな理由をこじつけて、いつも俺に押し付けてきたんだ。
結月はいつも俺の後ろをついてきた。
俺がおもちゃで遊んでいれば、横にちょこんと座って、じーっと見てくる。
俺が本を読んでいても、横にちょこんと座ってじーっと見てくる。
どこへ行ってもじーっと見てくる。
話しかけるなんてことはしないで、ただただ見てくるのだ。
「お前、なんなんだよ」
それが、俺が初めて結月にかけた言葉だった。
「なんでいつもじーっと見てくるんだよ」
結月が3歳、俺が4歳になった時だった。
ずっと長いこと、いつも追いかけてきて隣にくる結月を気にしないようにしていたけれども、仕事も始めたりして疲れも溜まっていた俺は、結月にとうとう耐えられなくなって、イライラしながらまるで八つ当たりのようにそう言った。
「だって、ママたちがお兄ちゃ…」
「お兄ちゃんって呼ぶな」
"お兄ちゃんなんだから"そう言われ続けたことで、お兄ちゃんという言葉にあまり良いイメージを持っていなかった俺は、結月の言葉を遮ってそう言った。
「で?」
俺は、結月に話の続きを促した。
「ママたちがや、大翔を見習えって言うから」
「あのな、だからってじーっと見てくるなよ。それに、見習うってのはずっと見ることじゃないんだよ」
イライラを抑えながら、できる限りの優しい口調で俺は言った。
けれど、意味がよくわからなかったのか結月は、首を横に傾げた。
そんな結月にイライラがピークに達した俺は、
「お前、本当になんなんだよ!いつも見てきて、怖いんだよ!!………お前なんか、大嫌いだ!」
そう結月に怒鳴った。
すると結月は、瞳をウルウルさせながら、
「結月は、大翔のこと好きだよ?」
そう言って笑った。
目をウルウルさせながら笑った顔のまま、結月は自分の部屋へと戻っていった。
「アイツ、本当になんなんだよ」
そう呟きながらも、さすがに言いすぎたんじゃないかと思って、俺は結月の部屋に行くことにした。
どうせ、アイツは何にもわかっていやしないだろうけど、このままじゃ俺の気分が悪い。
そう思いながら、結月の部屋の前に行くと、
「大翔、ごめんね」
そう言いながら結月はすすり泣いていた。
そんな結月に、俺は胸が締め付けられて、すぐに扉を開いて結月の部屋に入った。
扉の音に気づいた結月が、
「えっ?」
そう言葉を発したのとほぼ同時に、俺は結月を抱きしめて、
「さっきはごめんね。結月、俺も結月が大好きだから、泣かないで」
俺は無意識のうちに、そう言っていた。
すると、
「なら私は大翔が大大大好き」
なんて、まだ涙を流しながら結月は言った。
だから俺は、
「俺の方が結月を好きだよ」
「結月の方が好きだもん」
そのあとそんなやりとりを繰り返して、いつの間にか俺の腕の中で眠りについた結月に、俺は兄としてではなく、1人の男として結月を守りたいっていう感情を抱いた。
〜大翔Side End〜