月曜日。
重たい足を引きずって私は学校へと向かった。
いつものように、蓮と葵ちゃんが仲良く話しているのだろうなと思っていたのに、教室の扉の前で蓮が立っているのが目に入ってきた。
廊下のあちこちで女子たちが、そんな蓮を眺めている。
どうやら葵ちゃんは一緒ではないようだ。
葵ちゃんのこと待ってるのかな??
そう思って蓮の横を通り過ぎようとすると、
「結月」
蓮に腕を掴まれた。
「なに?」
なんで私を呼び止めるの?
「あのさ結月、俺……」
蓮が口を開いた時、
「二人とも席について。今日はテストだから、いつもより早くに朝礼を終わらせなきゃいけないのよ」
そう言って、担任の高橋先生に教室に入らされた。
気づけば廊下には、蓮を見ていた女の子たちもいなくなっていた。
っていうか、
「テスト??」
「あ、言ってなかったかしら。今日は1日中テストの日よ」
そう言われて、私がビックリしたのはいうまでもない。
あれから国語、数学、理科、社会、英語の順に5教科のテストを受けた。
「はいっ、そこまで!」
そう言われて、手からシャープペンを話した。
最後の英語のテストだけは、なんとかできたけれど他の教科は散々だった。
テストが終わってしばらくすると、
「あのさ結月、」
そう蓮に話しかけられた時だった。
「キャーッ」
という一際、大きな歓声が廊下から響いてきた。
コツコツ、
人の歩く足音が聞こえてくる。
この歩き方ってーー
「カッコいーい!」
コツコツ、コツ
「ちょっ!?あれって、加藤大翔じゃない!??」
コツコツ、
「うそ…??なんで、ここにいるのーー!?」
コツ
教室の扉が開いて、一人の男が入ってきた。
「迎えに来たよ。結月ーーー」
茶色いサラサラした髪を、細身でとても背が高く、約9頭身のその男は、私のもとに歩いてきたかと思うと、そのまま抱き締めた。
「会いたかったよ、結月」
そう言って私の額に、自分の額を当てた。
「ちょっと!大翔!?」
私がそう口にすると、
「なあに?」
と言って、額を私から話して首を横に傾げた。
「なぁに、じゃなくて!!なんでここにいるのよ!?」
そう私が聞くと、
「結月に会いに来た」
なんてふざけたことを言ってきた。
「大翔、私は真面目に聞いてるんだけど」
「てことで、今日から結月ん家行くから」
大翔は、私を怒らせるような言い方をわざとしておちょくってくる。
「無理」
なるべく冷静にそう言うと、
「えー?結月ちゃん、俺を泊めてよ。泊めてくれたら、可愛がってあげにゅ……ってやへひょや」
私は、再びふざけたことを言ってきた大翔の頬をつねって引っ張った。
私が引っ張っていた頬を離してあげると、
「仕事で2週間だけこっちにきてんだ。だから泊めさせろ」
そう言ってきた。
「大翔は、相変わらず命令するんだ」
私はわざとらしくそっぽを向いてそう言った。
すると、
「泊めさせてください」
「いいよ」
言い直した大翔に、許可を出した。
「よし、帰るか」
「うん」
そう言って帰る気満々だった私に、
「おい」
と、蓮が声をかけてきた。
「お前、加藤さんとどういう関係だ?」
なぜか真剣な目をして問いかけてくる蓮。
「あ、大翔は…」
私が答えようとした時、大翔が私の言葉に重ねて、
「俺は結月の婚約者だ」
なんて言った。
「ちょっ!??大翔??」
この男、一体なに考えてるのよ!?
「けど、俺が婚約してるなんてマスコミにバレたらスキャンダルになっちまうからな、秘密にしといてくれないかな?」
そう言われて蓮は大翔に、
「もちろんです。言いませんよ」
と答えてから、
「じゃあな」
と虚ろな目をして、私の頭を撫でて帰っていった。
蓮、どうしたんだろう?
「よし、帰るぞ」
「ちょっと!待ってよ、大翔!!」
そう言って、私の鞄を持って歩いていく大翔を追って私も歩いた。
キャーキャーという声を耳にしながら校舎を歩いて、私たちは家路に着いた。
ーーーーーーーーーー
ーーーーーー
ーー
「で、誰と誰が婚約してるんだっけ?大翔くん??」
やっとのことで家に着いた私たち。
そう訊ねた私に、
「いやいや、結月ちゃん落ち着いて。ほんの出来心だって。怒ったら可愛い顔が台無しだよ?」
そう言って、ウィンクなんてしてくる大翔。
「大翔くん?」
笑って聞く私に、
「ったく、良いじゃねーかよ。ちょっとくらい遊んでも」
大翔はそう言って、頭を掻いた。
「俺の大事な妹に変な虫がついたら困るだろ?」
「こんなお兄ちゃんと婚約させられる方が困るけどね?」
そう私が言うと、大翔はチッと舌打ちをした。
加藤大翔ーーー
彼は3歳の時に子役デビューしてから、俳優に移った現在までに、約50本の映画と約20本のドラマに出演し、18歳にして大御所と呼ばれ、今や日本だけではなく世界中で有名な天才俳優。
現在もアメリカを拠点にして活動している。
私も最近までアメリカにいたとはいえ、別の仕事だったから、会うのは実に5年ぶり。
そして加藤大翔というのは芸名で、本名は佐藤大翔。
つまり、私のお兄ちゃんだ。
私が女優になったのは、少なからず大翔の影響を受けているからだ。
まだ小さかった頃に、俳優として頑張っている大翔を見て、私もお兄ちゃんみたいになりたいって親にお願いしたのを覚えている。
私がアメリカへ行ったのはつい最近だけれど、大翔は7歳の頃にはすでに渡米していた。
私が6歳でデビューしたあの時、大翔を一人で長旅に出し、私のために日本に残っていた両親に、私が大翔とは違って上手くできないから"あんたは才能がないからやめなさい"と言われたのを覚えている。
といっても、もう昔の話で私も渡米した頃には、親に認めてもらえるようになっていた。
大翔は変なことを言ったりもするけれど、基本は私のことを考えてくれる優しくてかっこいい、私の大好きなお兄ちゃんだ。
「結月、学校楽しいか?」
突然、大翔は口を開いた。
「うん」
私はそう答えて、蓮のことを思い浮かべた。
「ならいいけど……。絶対に無理はするんじゃねーぞ」
大翔は私を嗜めるような口調でそういった。
「大翔…」
「ん?」
「ありがとう」
「あぁ」
大翔は優しく笑った。
重たい足を引きずって私は学校へと向かった。
いつものように、蓮と葵ちゃんが仲良く話しているのだろうなと思っていたのに、教室の扉の前で蓮が立っているのが目に入ってきた。
廊下のあちこちで女子たちが、そんな蓮を眺めている。
どうやら葵ちゃんは一緒ではないようだ。
葵ちゃんのこと待ってるのかな??
そう思って蓮の横を通り過ぎようとすると、
「結月」
蓮に腕を掴まれた。
「なに?」
なんで私を呼び止めるの?
「あのさ結月、俺……」
蓮が口を開いた時、
「二人とも席について。今日はテストだから、いつもより早くに朝礼を終わらせなきゃいけないのよ」
そう言って、担任の高橋先生に教室に入らされた。
気づけば廊下には、蓮を見ていた女の子たちもいなくなっていた。
っていうか、
「テスト??」
「あ、言ってなかったかしら。今日は1日中テストの日よ」
そう言われて、私がビックリしたのはいうまでもない。
あれから国語、数学、理科、社会、英語の順に5教科のテストを受けた。
「はいっ、そこまで!」
そう言われて、手からシャープペンを話した。
最後の英語のテストだけは、なんとかできたけれど他の教科は散々だった。
テストが終わってしばらくすると、
「あのさ結月、」
そう蓮に話しかけられた時だった。
「キャーッ」
という一際、大きな歓声が廊下から響いてきた。
コツコツ、
人の歩く足音が聞こえてくる。
この歩き方ってーー
「カッコいーい!」
コツコツ、コツ
「ちょっ!?あれって、加藤大翔じゃない!??」
コツコツ、
「うそ…??なんで、ここにいるのーー!?」
コツ
教室の扉が開いて、一人の男が入ってきた。
「迎えに来たよ。結月ーーー」
茶色いサラサラした髪を、細身でとても背が高く、約9頭身のその男は、私のもとに歩いてきたかと思うと、そのまま抱き締めた。
「会いたかったよ、結月」
そう言って私の額に、自分の額を当てた。
「ちょっと!大翔!?」
私がそう口にすると、
「なあに?」
と言って、額を私から話して首を横に傾げた。
「なぁに、じゃなくて!!なんでここにいるのよ!?」
そう私が聞くと、
「結月に会いに来た」
なんてふざけたことを言ってきた。
「大翔、私は真面目に聞いてるんだけど」
「てことで、今日から結月ん家行くから」
大翔は、私を怒らせるような言い方をわざとしておちょくってくる。
「無理」
なるべく冷静にそう言うと、
「えー?結月ちゃん、俺を泊めてよ。泊めてくれたら、可愛がってあげにゅ……ってやへひょや」
私は、再びふざけたことを言ってきた大翔の頬をつねって引っ張った。
私が引っ張っていた頬を離してあげると、
「仕事で2週間だけこっちにきてんだ。だから泊めさせろ」
そう言ってきた。
「大翔は、相変わらず命令するんだ」
私はわざとらしくそっぽを向いてそう言った。
すると、
「泊めさせてください」
「いいよ」
言い直した大翔に、許可を出した。
「よし、帰るか」
「うん」
そう言って帰る気満々だった私に、
「おい」
と、蓮が声をかけてきた。
「お前、加藤さんとどういう関係だ?」
なぜか真剣な目をして問いかけてくる蓮。
「あ、大翔は…」
私が答えようとした時、大翔が私の言葉に重ねて、
「俺は結月の婚約者だ」
なんて言った。
「ちょっ!??大翔??」
この男、一体なに考えてるのよ!?
「けど、俺が婚約してるなんてマスコミにバレたらスキャンダルになっちまうからな、秘密にしといてくれないかな?」
そう言われて蓮は大翔に、
「もちろんです。言いませんよ」
と答えてから、
「じゃあな」
と虚ろな目をして、私の頭を撫でて帰っていった。
蓮、どうしたんだろう?
「よし、帰るぞ」
「ちょっと!待ってよ、大翔!!」
そう言って、私の鞄を持って歩いていく大翔を追って私も歩いた。
キャーキャーという声を耳にしながら校舎を歩いて、私たちは家路に着いた。
ーーーーーーーーーー
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「で、誰と誰が婚約してるんだっけ?大翔くん??」
やっとのことで家に着いた私たち。
そう訊ねた私に、
「いやいや、結月ちゃん落ち着いて。ほんの出来心だって。怒ったら可愛い顔が台無しだよ?」
そう言って、ウィンクなんてしてくる大翔。
「大翔くん?」
笑って聞く私に、
「ったく、良いじゃねーかよ。ちょっとくらい遊んでも」
大翔はそう言って、頭を掻いた。
「俺の大事な妹に変な虫がついたら困るだろ?」
「こんなお兄ちゃんと婚約させられる方が困るけどね?」
そう私が言うと、大翔はチッと舌打ちをした。
加藤大翔ーーー
彼は3歳の時に子役デビューしてから、俳優に移った現在までに、約50本の映画と約20本のドラマに出演し、18歳にして大御所と呼ばれ、今や日本だけではなく世界中で有名な天才俳優。
現在もアメリカを拠点にして活動している。
私も最近までアメリカにいたとはいえ、別の仕事だったから、会うのは実に5年ぶり。
そして加藤大翔というのは芸名で、本名は佐藤大翔。
つまり、私のお兄ちゃんだ。
私が女優になったのは、少なからず大翔の影響を受けているからだ。
まだ小さかった頃に、俳優として頑張っている大翔を見て、私もお兄ちゃんみたいになりたいって親にお願いしたのを覚えている。
私がアメリカへ行ったのはつい最近だけれど、大翔は7歳の頃にはすでに渡米していた。
私が6歳でデビューしたあの時、大翔を一人で長旅に出し、私のために日本に残っていた両親に、私が大翔とは違って上手くできないから"あんたは才能がないからやめなさい"と言われたのを覚えている。
といっても、もう昔の話で私も渡米した頃には、親に認めてもらえるようになっていた。
大翔は変なことを言ったりもするけれど、基本は私のことを考えてくれる優しくてかっこいい、私の大好きなお兄ちゃんだ。
「結月、学校楽しいか?」
突然、大翔は口を開いた。
「うん」
私はそう答えて、蓮のことを思い浮かべた。
「ならいいけど……。絶対に無理はするんじゃねーぞ」
大翔は私を嗜めるような口調でそういった。
「大翔…」
「ん?」
「ありがとう」
「あぁ」
大翔は優しく笑った。