彼女の美醜という他愛もないことを考えていたら、ふいに彼女の様子が変わった。
先程までは先輩に会えたうれしさで溢れていたのに、今は膨れっ面で言葉を交わしている。
何かあったのだろうか。
不思議に思うも会話の内容までは耳に届かず、ただ様子を傍観するしかなかった。
最後に宥められるように頭を何度かぽんぽん、と撫でられても彼女はむくれたままだった。
その少し幼い表情は珍しいが、彼女がしてもあまり違和感はない。
素直に表出される感情が僕には少し羨ましい。
女の子は感情や気持ちが体と直結していることが多い。
気持ちと体がすれ違うことの多い僕からすると、感情豊かというのはいいことだと思うが、その素直さはまるで純真無垢な赤子のようだ。
……やはり、僕には眩しすぎる。
蓋をして、出てこれないように何重にも包んで。
それでも不安で、金庫にしまって窓もない部屋に入れて唯一の出入口に頑丈な鍵をつけて封印する。
そんな僕から見れば、なんと素直に生きていることか。
困り顔の先輩が手を振り去っていくのを廊下に出て見送る彼女の背中は、淋しそうだった。