「.........お前にはつらい思いをさせてばかりだな」


さっきのからかうような顔が厳しい顔つきになる

父がこんなに思い詰めているのだから、きっと、母も同じように思い詰めているのだろう


苦しくなる




「いいんです。私は...そこまで私のことを考えているということを嬉しく思います。それに、お父さんの仕事を私は誇りに思っています」


涙なんか出ない

あの夜に

おいてきた


「遠からず、私は世界に出なければならないと前から考えていました。それが、夜会の日に決まった、と言う事だけです。いいんです、もうすでに、自由に過ごしてきたんです」


他の人より自由だったわけではない

むしろ他の人のほうが自由だったに違いない



だが、もう三年以上


表に出ていない



「そろそろ、私のいるべきところにいくだけ、いや、本来いるべき場所に戻るだけです」



そう、もどるだけ



「......あの事故で、また、お前は心を閉ざしてしまった」



「.......そうですね」



「実はな、ルイ君をお前の婿にと思っていたんだよ」


「それは、初耳ですね」


笑って答える



「ルイ君にならお前をまかしてもいいと思っていたし、それに、お前もルイ君になついていたから、いつかはお前たちから言い出すのでないかと澤田さんとも言い合っていたんだよ」



「まあ、それはそれは」