「違う。今のはあたしが悪いのよ」
「……好美」
「ごめん、翔太。こんなことするつもりじゃ…、」
再度その腕に閉じ込められて、言葉を失った。
どくどくと早鐘を打つ心臓が、煩わしい。
所在なさげに視線をさ迷わせていたあたしは、彼がクスリと笑みを零したことを肩越しに感じた。
「好美は、昔からそうだよな」
「…、…何が?」
「自分が悪いと思ったら、とことん謝る。絶対に他人の所為にはしない」
「なによ、それ」
知らない。そんなの、あたしじゃない。
だって、あたしがよく言われる言葉は、そんなに優しいものじゃない。
―――強気で、高飛車で、短慮。加えて遊び人。
初めは強がりなだけだった。
翔太という心の柱を見失って、ひとりで生きるために身に付けた仮面。
でも、"強気なあたし"をいつ止めればいいのか。
分からなくなって、悩むこともしなくなって、終着駅を完全に手放した。