耳に入ったのは母親の声。

その瞬間ハッとして掴まれていた手首をパシリ、振り払った。




そのまま駆け足で玄関まで向かっていく。

背後に佇む翔太の顔を見ようとは、思わなかった。





「……なんだよ、」


あたしがその場を去ったあと。

瞬間的に顔を歪めた男は、誰にも聞かれることのない独白を零していた。







――――――――――…





「母さん、何処行ってたの!?」

「翔ちゃんママとお買いもの。…?何でそんなに慌ててるの」



吊り上げていた眉は、そう指摘されるのと同時に下がっていく。

所在なさげに視線をさ迷わせるあたしを見て、不思議だと言いたげな表情の母は首を傾げていた。






「そういえば好美!翔ちゃん居たでしょ。どうだった?」

「…どうだった、って?」

「あ、うーん。カッコ良くなったでしょ?」

「っ、」



おばさんと購入してきたらしい大量のショップ袋を玄関に置いた彼女は、シックなヒールものの靴に手を掛けながらそう口にした。