家に着いて部屋の時計を見るともう6時になっていた
急ぎ足で店番のための私服にきがえる。
『ゴミついてないよな…』
鏡を見ながら確認する。鏡にうつる自分は高身長で、サラッサラの髪の甘いフェイス…ではなく
ボサボサの天パーに黒縁メガネのとても甘いフェイスとはいえないような中の下おまけに163cmという男にしてはチビのなさけない姿だった
『こんな奴が翔子さんにつり合うわけないのにな』
自分の持っている気持ちがバカバカしく思えてきておもわずわらってしまった。彼女につり合う男はこの世には片手ほどしかいないだろう
叶わないとわかっていても微かな希望を捨てないのがきっと恋の魔法なんだろうな…

翔子さんはいつも8時ぐらいに店に来る。どうやら毎日塾があってその帰りにこの店によっているらしい
あと、2時間。ただまっているだけでは長いので仕入れたばかりの小説を読むことにした。
ダンボール1箱分に狭そうに本達がならんでいる
『なによもうかな…
手前にあるこれでいいか』
その本のあらすじをみてみると『身分違いの2人の運命の物語』と書かれてあった
昔の僕ならこういう恋愛小説はまっぴらごめんだったが恋の魔法にかけられてからは恋愛小説が好きになってしまった。
ドキドキしながら小説を読み進める
中々内容は面白いものであった。以外な展開がつづいてつい前のめりになってしまう。
『どんな障害があってもあなたを守りぬき愛し続けると神に誓う』
この言葉は…確かこの前翔子さんが来た時に探している本に書いてあったお気に入りの言葉だといっていた。
『こういうのもよむのか…
もしかしたら翔子さんも誰かに恋をしているのかもしれない…』
自分で考えたことに自分でかってにおちこんでしまった。好きな人に好きな人がいるなんて今まで考えたこともなかったが…考えれば考えるほど悲しい結末しかみえてこない。
気を取り直して小説をまた読み進めるが、追い打ちをかけるようにクライマックスは2人が結ばれないという結果だった。
『そうだよな…
身分違いの恋なんて…むすばれるはずがないのに』
ある意味僕も身分違いの恋の真っ只中なんだろう
先が見えていることに目を閉ざし、現実から目を遠ざけている。
彼女がこの先何度この店を訪れても彼女の気持ちは1ミリも僕にはつもらないが、僕は日に日につもっていくばかり。今はただ会えるだけで幸せをかんじられるけど後々この思いが自分を苦しめていくことになるかもしれない。だからといって、自分の気持ちを伝えるなんて勇気は僕にはない。
1時間半で読み終えた小説をじっーとみつめて1人迷走していた。