しん兄は、渋々せーちゃんから手を放し、双雷側の自己紹介を促した。



「俺は……」


また。

“あなた”が、私を一瞥した。



オウサマより数センチ高い身長は、私を容易に見下ろせる。


けれど、なぜだろう。

“あなた”を近くに感じる。



藍色の瞳が、何か言いたそうに、大きく泳ぐ。


一度まつ毛を伏せると、もう目が合うことはなかった。




「俺は双雷の幹部の、野々塚 緋織【ノノヅカ ヒオリ】。高3だ」



ハイトーンのブルージュをベースにした、柔らかな髪。

後ろのほうの毛先は、明るめのバイオレットの色で染めている。


両耳に1つずつ付けたピアスや美しい藍色の双眼、左目の下にあるほくろは、軽めの長い前髪で、あまりよく見えない。



それでも、私は、“あなた”――オリの瞳を明瞭に捉えてしまうんだ。




「緋織はすごいんだ!外国の大学を飛び級で卒業してて、今は白薔薇【シロバラ】学園に特別枠として通ってるんだぜ!」


「おい、やめろ」


「えー、なんでさー!」



自慢げに言いふらすみーくんに、オリは呆れ気味にため息を吐く。



双雷の5人の中で唯一学ランじゃないのは、それでか。


確かに、オリが着ているブレザーには、胸元に白薔薇学園の紋章が施されている。




「白薔薇学園って、あの名門の?」


「そう!超進学校で有名な、あの白薔薇学園!」


「へぇ、すごいな」


「だろ!?」



しん兄の素直な賞賛を、みーくんは自分のことのように嬉々として受け取った。


オリはそんな周りを横目に、どうにでもなれと言わんばかりに投げやりになっている。