彼、あず兄は機嫌よさそうに私の髪を撫でた。
あず兄こと、花宮【ハナミヤ】あずき。
私よりひとつ年上の、幼なじみ。
明るい金髪を、後ろでちょこんと結っていて。
左耳には、ピアスとイヤーカフを1つずつ付けている。
この見た目からわかる通り、あず兄は俗にいうヤンキーだ。
「花宮先輩だ!いつ見てもかっこいいなぁ~」
「矢浦さんとどんな関係なんだろうな」
「やっぱカレカノでしょ!」
「えー、やだーっ!」
「花宮先輩って、どっかの暴走族の総長なんだろ?怖くね」
「そこがまたいいんじゃーん!」
背後で、クラスメイトがさっきとは違う意味でざわついている。
が、いちいち気にしていられない。
「……萌奈?」
「ううん、なんでもない!帰ろ」
あず兄の腕を引いて、教室を離れた。