「美優、綾乃、おはよう!」

「しゃちょ~。おはようございまぁす」

「有明、おはよ」

「綾乃!社長って呼べ!」

綾乃とは仲良さそう。まぁグループができた時からいるという綾乃。付き合いはきっと長いのだろう。

そんな3人の横で小さく縮こまっていたら、社長はわたしの顔を覗きこんできた。

「ひっ!」思わず声をあげる。

「新人?
俺は七色グループ社長の有明 光です!これからよろしくね!」

覗きこまれた瞳が少年みたいにキラキラしている。

苦手なんだ。こういう自分とは全く違う人種は。

「名前は?」

「さくらです」

「さくら?」

まただ、深海といい綾乃といいこの人も、わたしの名前を聞いて一瞬時を止める。

一瞬戸惑ったような表情を見せたけれど、すぐにわたしの目の前に顔を寄せて、にこりと目を垂れ下げて微笑む。

ぽんっと頭に手をやると、もっと優しい笑顔に変わる。

「さくらか。よろしくな!君はきっと売れるよ」

頭に手を置かれて、心臓がびくんと跳ね上がり、体温が上がるのを感じる。

すっと手をひっこめると、彼は深海のいるバックヤードへ風を切って去っていく。