「おはようございまぁす」

鈴のような声で、にっこりと愛想よく笑う。目の前に現れたのは、わたしが今まで生きてきた人生では出会うことがなかったような人種。

一言でいえば派手。

「おはようございます…」

自分自身でも社交的な性格ではないことを知っていた。
目の前の彼女の顔を見れず、彼女が手に取った水色のワンピースにばかり目が行く。胸元にカラフルなビジューがついていて、綺麗だななんて下らないことばかり考えていた。

「体入の子?

わたしは美優。よろしくねぇ~!」

顔を上げたらにこにこしながら美優は人懐っこい笑顔をこちらに向けた。

「はじめまして、さくらです」

テレビや雑誌で見たイメージは女の戦場。
怖い人ばかり、火花を散らす世界。そんなイメージを覆してくれたのも美優との出会いだった。

きっちりとセットされた髪とばっちりとメイクされた顔。
でも美優はその見た目と反して親しみやすい雰囲気を出しながら、1枚のワンピースを手に取り、わたしに合わせる。

「ん~?こっち、あ!こっちも似合うかなぁ?あ!でもこのピンクが似合うよ!これにしなよ!」

美優が再びピンクのワンピースをわたしに合わせて「よく似合ってる」と、得意げな顔をした。

選んでくれたワンピースを持って更衣室に行って着替え、美優に手を引かれるままに女の子が待機しているという場所に連れていかれる。更衣室で着替えている間も相槌しか打てないわたしにずっと話をかけ続けてくれていた。

待機の場所に行くと女の子がずらっと並んでいて、品定めするように一斉に視線が集まった。「おはようございまーす」美優が言って私の手を引っ張り「こっち座ろう」と空いているソファーに腰をおろす。

話を聞くと、美優はわたしより2つ年上の20歳で、昼間はOLをしていてお店に出勤するのは週に3~4回程度らしい。わたしが週6出勤だと言うと「じゃあレギュラーだね」と言った。どうやらレギュラーとアルバイトに分けられているようで、美優のように昼間の仕事と掛け持ちしている女の子はアルバイトが多いらしい。

高い声と派手な髪形と化粧。だけどよく笑う子で、何よりも人付き合いが昔から得意ではないわたしに初めて親切にしてくれた初めての夜の女の子だった。