その日の営業終了後深海から呼び出された。
疲れているはずなのに、美優と綾乃は「待ってる」と言ってくれて、終わったら連絡してねと言い残し夜の街へ消えていった。

わたしたちキャストよりずっと疲れてそうな深海はソファーに腰をかけてふぅっと大きなため息をひとつ吐いた。

「今日はおつかれ」

「深海さん、今日は泣いてしまって本当にごめんなさい!」

「…さくらは本当に真面目なんだな…。
謝ることはないよ。俺の配慮が足りなかった。
大変なこともたくさんあるし、大変だからこそ給料も高いんだと思う。
それでどうだ?できそうか?」

「やります!てかやらせてください!あたし、頑張りますから!」

それは心からの本音だった。
OK、と深海が小さく呟いた後「マジかよ~!」と後ろからだるそうな声が響く。

大きなあくびをしながら、両腕を気怠そうに伸ばす高橋がそこに立っていた。壁に寄りかかりながら「深海さんの前でピーピー泣いてっからぜってぇ辞めるに賭けてたんだけどなぁ~…」とニヤニヤと笑う。…やっぱり、こいつ。

「さくら、お前の担当は高橋だ。まぁ後は任せた」

「深海さぁ~ん。仕事増やさないでくださぁ~い」

「さくらの成績まんまがお前の評価だ。がんばれ」そう言うとぽんっと高橋の肩を叩く。

「俺も深海さんと一緒で出世欲ないっすよぉ~」その高橋の言葉に深海は反応せずに「おつかれ」とだけ言い残してお店を出て行った。


残されたのは、高橋とわたし、ふたりきり。
気まずい。…というか担当って一体何?