「もぉ~さくら~飲めないんだったらちゃんと言ってよ~!ファジーネーブルとか飲みやすいよ。頼もう!ね、久保ちゃんいいでしょ?」

「いいよ~!今日はさくらちゃんの初仕事だから好きなものじゃんじゃん飲んじゃって~」

「うぅ…何かごめんなさい」

美優が頼んでくれたファジーネーブルは驚くほど美味しくて、ジュースみたい!って言ったら2人はまるで子供をみるように笑う。美優と久保にリードしてもらって、お酒の力もあってか緊張は徐々になくなっていった。笑って2人の話に混ざることも出来るようになった。
久保も美優も段々酔っぱらってきた頃、深海がやってきて「さくらさんお願いします」と言った。

「え~もぉ行っちゃうのぉ」と久保は残念そうに言って、美優は口パクで「がんばれ」と言った。

その後はフリーの席に2つついた。お酒の力もあってか楽しく会話も出来て、ついたお客さんも皆優しい人ばかりだった。やれるかも!と自信が出てきた時に深海に呼ばれた。

「さくら、次3卓。はるなのヘルプな」

自信なんてすぐに崩れていくものなんだ。
久保も良い人だったし、その後のフリーでついた2人も優しい人だった。だから皆こんな感じなのかな~、なんて思ったのが甘かった…そんな事を思い知るのはすぐだった。すぐにこの世界に入って、壁にぶちあたる。

「さくらさんです。
はるなさん、お願いします」

「えーはるな行っちゃうの~?」

「すぐに戻ってくるからぁ」

綺麗な人。美優も綾乃もそれぞれ綺麗だったり、可愛かったりするけれど、自分と比べればここにいるすべての女の子たちが華やかで輝いて見えた。
はるなはわたしの顔なんて一切見ずに、男の肩に少しもたれた後立ち上がった。
まるでわたしの存在なんて見えていないように。

「さくらです!失礼しまぁす!」

はぁ~、卓につくなりその男はわたしを上から下まで品定めするように見て、わざとらしく大きなため息を吐く。
なんとなく険悪なムード。