「美優さんと、今日から入ったさくらさんです」

深海はそれだけ言うとにこりと笑い、頭を下げて忙しそうにその場からいなくなる。

「久保ちゃ~ん!来てくれて嬉しい!
今日は特別!体験入店できてるさくらも一緒だけどいいよね~!さっきめっちゃ仲良くなったんだぁ~」

そう言いながら、久保の横に座り美優は腕を絡ませた。

「お~初めまして~さくらちゃんかぁ~わかそ~!」

意外だった。
勝手な想像でキャバクラにくるお客さんっておじさんとか社長さんばかりみたいなイメージをしていたが、久保はいたって普通の男性だった。
30代くらいでラフな格好をしていて、爽やかに笑う人で好印象だった。

「まぁさくら座って~!」

久保とさくらのテーブルを挟んだ丸椅子に腰をおろすと、自分の緊張がピークに達しているのに気づく。

「…すいません」口から出た言葉はそれが精いっぱいだった。
何がすいません、なんだろう。
さっきまで美優に1番になりたいって話をしていたのに、恥ずかしくて消えてしまいたい。

「なぁ~にがすいません!なんだよ!おもしろいなぁ」

「あ!お酒作ります!」

慌てながらテーブルにあるグラスに手を取ろうとしたら、はずみでグラスを倒してしまう。
一瞬シン、となった後久保と美優は顔を見合わせて大笑いした。


「さくら~緊張しすぎ~!」

「でも可愛いなぁ~!新鮮!」

「あらぁ~久保ちゃん浮気~!?」

「いえいえ~俺には美優様だけだから」

「ならよし!」