ソファーに座りなおして、何もない宙を見上げて丁寧に言葉を紡ぐ。

「大切なことなんだよ。なりたいってことを素直に口に出すことは恥ずかしいことなんかじゃない。ううん。むしろそんな心意気がなくちゃここにはいられないのかもしれないな…」

さっきよりずっと静かなトーンで喋る美優。
わたしは突っ伏してたテーブルから起き上がり、美優の方を向く。
美優は困ったように眉毛を下げて笑う。その表情はわたしの夢をあざ笑う感じじゃなくて、優しい微笑みだった。

「今日の帰りさ!わたしのメイク道具使ってないのあげるね!
メイクも教えてあげる!実は人にしてあげるの超得意なんだ!それにあたしはさくらの夢を応援する!応援団だよ!」

「応援団?」

「うん!あたしはさこの仕事自体は嫌いじゃないけど、この仕事でトップになってやるとかそういった志しみたいなもんはないんだぁ。自分の夢のための踏み台?って感じかな?」

「夢?」

「夢。いつか話したくなったらさくらの夢も教えてね。その時あたしの夢も教えてあげる!」

わたしがしたかったことは夢なんて大それたことではなかったと思う。
そんな純粋なものではなかった。
愚かで、浅はかで、もっと醜いもの。

けれど女の戦場であり、男の戦場であったこの場所で、宝物のような出会いがたくさんあった。
何があっても頑張ってこれたのは、あなたに出会えたから。今になり、思う。