「っ…」

「高橋くん、やめなよ」

「は?悪い意味で言ったんじゃねぇよ。磨けばいくらでも綺麗になりそうだなって思っただけ。美優さんと綾乃さんで化粧とか教えてあげてくださいよ。さくらさん元は綺麗な人でしょ」

綺麗、だなんて真っ直ぐに言われたことはない。
高橋の直球すぎるその言葉に思わず赤面してしまう。

「似合う色はピンク。目の大きさは生まれつき?ブラウン系の大人っぽいメイクが映えそうだな。可愛いというよりは綺麗系だから前髪は流すかあげた方がいい。
さくらさんに前髪は似合わない」 なんて恥ずかしげもなくわたしの顔の分析をして、頭をかきながらホールへ戻っていく。

「ふふ」

美優が不敵に笑う。

「高橋は口は悪いけど仕事はできる奴だよ。
それにしてもさくらはすごいなぁ~」

「へ?何が?」

「社長も売れるっていうし、高橋も珍しく女の子の容姿の批評なんかしちゃって。
それに高橋だけじゃなくて、深海さんからもさくらにメイク教えてあげて~ってあたし言われたんだ。
黒服さんとかこの世界の男の人は結構女の子見る目あるよ~?
特に社長が連れてくる女の子とか、社長が売れるっていった子は本当にすぐにナンバーに入る子が多いの!」

「でもあたしなんて…。」

「別にさくらがこの仕事を適当にやって適当にお金稼ぎたいだけならあいつらの言うことなんてなんも気にしなくていんだよ~!」

「ちが!わたしは1番になりたいの!」

言ってしまった後に赤面。
穴があったら入りたいとはまさにこのことで。はぁ~っとため息をはいて目の前のテーブルに突っ伏す。 わたし一体何を言ってしまってるんだろう。未経験でこんな野暮ったいやつが1番になりたいなんて言ったらそれこそ失笑ものだよ。
けれど美優はそんなわたしの想いを笑ったりはしなかった。