「どうしよう…」

私は今、とてつもない恐怖に襲われている。

かの悪名高い佐渡 佑都(サドユウト)と女子の修羅場に運悪く居合わせてしまったのだ。

とにかく見つからないようにと息を潜めてはいるが、いつどうなるか分からない。

恨むよ、先生っ!

そう、そもそもこの状況に陥ったのは、担任である安藤先生のせいなのだ。

昼休み、いつもボーッと過ごしている私を捕まえて先生は、美術室にあるビデオを取ってきて欲しいと頼んだ。

正直、自分でやれよ。という気持ちは大きかったが、渋々了承。

しかし、昼休みの美術室と言えば、目につきにくい場所にあることから魔の巣窟と言われている。

まぁそれは私が勝手に名付けただけだが、美術室は不良がたむろしやすいのだ。

不良と言っても、あからさまなリーゼントというわけではなく、茶髪にピアスにネックレス。

ありとあらゆる校則を破る集団のことなのだけど。

まぁ、校則を破ったことがないのだけが取り柄の私にとっては、そのような人種は恐怖の対象でしかない。

そういうわけで、美術室には極力近づかないようにはしていたのだけど、先生ほ頼みとあれば逃げるわけにはいかない。

そう、私はくそ真面目なのだ。

この融通の利かない性格には私も常々悩まされている。

何度友達を失ったことか…

しかし、こんな私にも高校で新しい出会いがあり…と、この話は後にして。

そんなこんなで私は美術室に向かった。