「あなたは、運命の出会いを信じますか?」
ある、占いの館にはいり、占い師にこういわれた。
「近くにいますよ。近いうちに会えるはずです。」
「ほんまに?それってそれって、」
この人ですか?
と、写真を見せたくなったけど・・・・
こういうのって、じぶんでなんとかしやなあかんもんやんな。
そう、言い聞かせて。
「ありがとうございます。がんばります」
そう言って、占いの館を出てきた。
「やった!兄ちゃんに、告白されるんかも。それとも、うちが、告白したら、うまくいくようになるんかな❤️」
うちの名前は、小山みと。
「みと、どうだったの?」
「うん、あのね!」
「みと、嬉しそうだね」
一緒にいるのは、親友の、戸川留美。
「そう?そうかな」
うちの、憧れの人・・・好きな人は、従兄弟の兄ちゃん。
小さい頃、よく遊んでくれたにいちゃんは、うちにとっては、憧れの人で、初恋の人やった。
で、その憧れの、従兄弟の兄ちゃんは、いまや、人気アイドル「SAMURAI」の一員、森
山幸助だ。
彼を、男の人と意識したんは、彼がグループに入ってからや。
「自慢の兄ちゃんや」
「みと?」
「留美、うち、兄ちゃんに告白されるんかもしれやん。そうなったら、カメラマンの夢ますます諦められやん!」
「みとったら、そんなことになったら、彼は、仕事やりにくいんじゃない?いまでも、みとは、ファンレター渡してくれって頼まれるんでしょ?」
「そうなんやけど~」
「でも、占い当たるといいね!幸助から、告白されるかは、ともかく、運命の出会いをするんでしょ?」
「いや!絶対告白されるんやもん」
そう、決めつけていた。すごく、期待していた。
兄ちゃんから、話があるって呼び出されて、浮かれまくるうちやった。
兄ちゃんのファンに知られたらきっと、きっとなにされるかわからんレベルやけど。
「みと・・・・・」
「・・・はい!」
「・・みと、俺のこと好きなのか?」
「・・・好きや。ファンとか、兄ちゃんだからとか、関係なくちゃんと、男子として好きや!」
「・・・・・ごめん。俺、みとの気持ちに答えられないや。」
「・・・・・それって・・・・・」
「・・・俺、好きな女いるから」
そうだった。
兄ちゃんは、ずっとずっと思ってる人いたんやった。
でも、それって・・・・・
「やっぱり、ちがったんや。」
「・・・やっぱりってなんだよ。」
「・・・兄ちゃんの好きな人って、千里さんやろ?」
「・・・・・なんで、知ってるんだよ。たしかに、前までは妹の千紗が好きだった。でもな、俺がいま好きなのは、姉の千里の方だ。」
「・・・・」
「だから、お前の気持ちに答えられない。・・まぁ、いまは、片想いに近いけどな」
「・・・片思い?まだ、好きっていってないんか?」
「・・・・って、なんでこんなことみとに話してんだろ。」
なんか照れてる兄ちゃんが、可愛らしかった。
「・・・兄ちゃんの恋、うまくいくとええな。」
「・・・えっ?」
「本当は、期待していたんやけど・・・・・でも、兄ちゃんの好きな人が、千里さんでよかった。」
「・・・なんだよそれ」
うちは、この前、千里さんに会ったと、いうことは、内緒にしておこう。
「・・・うちな、占い師に、「運命の人に出会える」って言われたんや。だから、兄ちゃんに告白されるって思い込んでて・・・・」
「・・・運命の人に出会うんなら、それは違うじゃねーの?」
「・・・うん。いま、わかった。兄ちゃんは、兄ちゃんや。うちの自慢の兄ちゃんのままなんやなって。」
「・・・自慢は、言い過ぎだよ」
「・・・けど、諦めやん。うちは、信じることにするわ。だから、兄ちゃん、千里さんと、幸せにな」
「・・・あぁ、ありがと」
「・・・じゃ、あんまり、長話してると、ファンが気づくから、行くわ!」
「・・わかった。じゃ、またな」
「・・・うん!」
うちは、明るく別れた。
そのあと、うちは、気分を一新するために、部屋の模様替えをすることにした。
「きっと、出会えるやんな?運命の人に。」
それから、1ヶ月ぐらいしたときやった。
「はぁ、なんでうちこんなに買い込んでしたんやろ。」
この1ヶ月、いろいろレイアウトを、考えて部屋の模様替えをしてきた。
本を読んで、すきな色で揃えてみたりもした。
インテリアコーディネーターになった気分やった。
「次は、丸の内病院前~」
ピー
降りる停留所だったから、ボタンを押し、着いて降りるところだった。
「あっ!きみ!待って!!」
呼ばれたような気がしたけど、構わず降りた。
ドアがしまります。
「あっ!降ります!」
うちの、すぐあとに男の子がすぐ、降りてきた。
なぜだか、息が上がっている。
「きみ!まって!」
腕を掴まれた。
「あの?」
荷物忘れてるよ?ほら」
「えっ?あっ、すんません。あまりにも、多くて・・・・」
「よかったぁー!間に合って。車内は意外と混んでたし、、一番後ろからだったし。」
「あっ、ほんと、すみません。」
「重そうだね。何をそんなに買い込んだの?」
「新年過ぎてしもたけど、部屋の模様替え。」
「そうなんだ。心機一転ってやつ?」
「でも、うち、ほんまアホなことしたと思ってる。こんなに、買うてしまうやなんて。」
「・・・俺、降りるバス停ひとつ先なんだけど・・・・」
「・・・えっ?ええの?バス、もう発車するで?」
「・・・いいよ。ここからでも、近いし。それに、君の荷物すごく重そうでたくさんあるの気になったし。」
「優しいんやな。こんなに荷物持ってる女子、ありえやんのに。」
「・・俺、藤木勇気。君は?」
「うちは、小山みと。」
「降りたついでだ。荷物もってあげるよ」
「えっ?ええの?彼女さんとか、いるんやないの?」
彼が、ちらっと、その方向を、みた気がする。
「誰か・・・いるん?」
「・・・いいんだ。たぶん、俺の気持ちに気づかない人だし」
「・・・・たぶん?」
これが、うちと、勇気君との出会い。
うちにとって、これがかけがえのない出会いになるなんて、このときは、思っていなかったんや。
10分ほどあるいて、うちが住んでる、マンションまできた。
「おおきに、勇気さん。」
「勇気さんだなんて、なんかいやだな。俺、これでも、二十歳なんだけど?」
「えっ?うそや。うちと、タメなん?」
「えっ?タメって。みとさんも、二十歳?」
「見えんやろ?子供っぽいって、よく言われるから・・・・」
うちは、部屋を開けて、勇気君を、へやへいれた。
荷物運んでくれたお礼をしようと思っていたのに。
「・・・これ、ここでいい?」
なんと、荷物整理までつきあってくれた。
これ、未成年なら、訴えられてるかもしれやん。
知り合ったばかりやのに・・・
「おおきに、勇気君。一個手前で降ろさせたあげく、片付けまで手伝ってもらって・・・・」
「・・部屋の模様替えなんて必要ないじゃん。十分きれいだし。女の子の部屋って気がする」
「・・・・新年やし、気分一新したくて・・・でも、なかなかじぶんが納得する部屋にならなくてな。ほんまは、ずっと落ち込んでいたんや。」
「・・・それって、失恋したってこと?」
「・・ 当たりや。なんでわかったん?」
「・・・・そういうの、なんとなくわかる。女の子は、髪を切るとか、ジンクスあるよな。だけど・・・・」
「・・・勇気君も、そんなことあるん?」
「・・・半分当たり。一個手前で降りたのは、みとさんに、荷物を手渡すだけじゃなかったよ。」
「・・・本当は、誰かいたから・・・・。」
さっき、目線で、追いかけていた人・・・・・。
「・・本当はね、ちゃんとおいかけるつもりだった。」
「・・・ごめんな。うち、引き止めてしもたんやな?」
「・・・・いいんだよ。それより、もう、帰らなきゃ。」
「・・勇気君、大学生なんやな。その本重そう。なのに、荷物運んでくれて・・・・ほんと、優しい人・・・・」
「医者になろうと思ってさ」
「すごい!頭ええんやな!うちはな・・・カメラマン目指してるんや」
「・・・そっか、だから、写真・・・・ みとさんらしい・・・・」
「・・・うでは、まだまだなんやけど・・・・」
「・・・そんなことないよ」
「・・・あはは。おおきに。」
「それじゃ、お邪魔しました。」
「まって!勇気君。」
「えっ?」
「・・・これ、今日のお礼。すっかり、わすれるところやった。」
うちは、缶コーヒーを、渡した。
「・・たいしたことしてないに、ありがとう。」
「なんかね、勇気くんとは、これっきりじゃない気がするんだ」
「・・・じゃあさ、その時は、声かけてよ。知り合った仲だし。」
「・・えっ?ええの?」
「・・いいよ。だって、俺も、みとさんとはまた、会う気がするから」
「・・うん、うちも、そんな気がする」
「・・・じゃあ、また」
勇気くんは、にっこり笑うと、ドアを閉めた。
・・・これが、運命・・・・
そんな“運命の日”は、来た!
なんと、また、お兄ちゃんから、連絡を受けて、
「みと、今日、暇か?」
「日曜日やし、暇と言えば暇やけど・・・、お兄ちゃんは、大丈夫なん?」
「まぁ、細かいことは、気にするな。お前に、男を、紹介してやるよ」
「・・え~?うちは、お兄ちゃんに、失恋したのに、そのお兄ちゃんに紹介されるやなんて・・・・」
みんな、聞いたら、なんと言うやろ。
「・・そんなこというなよ~?顔見れば、お前も気に入るんじゃないねぇかな」
「・・っていうか、こんな町中で、一緒にいるうちら、あきらかに、怪しいよね?」
「・えっ?」
「・・だって、お兄ちゃんは・・・・ちょうにんきアイドル・・・サムラ・・・」
「・・バカ!声が大きいよ!バレるだろ!」
お兄ちゃんは、うちの口を押さえた。
「・・・ええやん?バレても。いとこのお兄ちゃんが、スーパーアイドルやなんて、けっこう自慢やもん。」
「・・あのなぁ!」
「・・ふふっ!なぁんて、嘘やわ。」
「・・・みと」
「・・・兄ちゃんが、いとこってだけで、近づいてくる女子がいて、うちに気がないとわかったら、逆に嫌がらせするんやで?うちは、はじめから、ただのいとこやのに・・・・」
「・・おまえには、悪いことしたから、せめてと思って」
「・・おおきに。でも、うちな、この間、ちょっとええ男子におうたんや」
「・・へぇ、そりゃ、よかったじゃん」
「・・うん。それが、運命ならええんやけど。」
「信じれば、いいんじゃねぇかな。みとが、それを信じれば、運命は、動くと思うぜ?」
「おおきに、お兄ちゃん!
で?今日は、どんな人、紹介してくれるん?」
「・・それがさぁ、岡本の、元クラスメイトなんだってさ」
「・・・岡本って・・・
えっ?メンバーの、岡本くん?」
同じSAMURAIのメンバー、岡本くんから紹介してもらえるやなんて!ますます、ドキドキしてきた!
「・・ったく、背中はやめろよ」
うちは、ドキドキしながら、待っていた。
その頃・・・
「・・なぁ、岡本~!!俺、メガネないと、ほとんどみえないんだ。勘弁してよ」
「・・あかん、あかん。あんさんは、メガネないほうが、イケメンなんやから。」
「・・・で?なんで俺に、女の子紹介してくれようとしてるの??忙しいんだろ?」
「・・・おまえ、忘れたんか?言うてたやん!誰か紹介してよ!って」
「・・言ったかなぁ?」
「・・・それとも、美鈴さんのこと、忘れられやんのか?」
「・・・・・・」
「・・ええかげんあきらめて、気分一新したらどうや?」
「岡本先輩が、いとこの女の子、紹介してくれるんや」
「・・・ふーん、いとこね」
「・・ここまできて、逃げるとは言わせやんで?
「・・おまえって、そんなキャラだったっけ?」
「・・ふふふ、ファンが知らない俺をおまえは、知ってるんやで?どうや?惚れたか?」
「・・・なんで、おれが、おまえに惚れるんだよ(笑)
それより、俺、大学の宿題山積みで、忙しいんだけど?手伝ってくれるのか?」
「・・すまんなぁー、なんやかんやで、約束の場所に着いたで?」
「・・えっ?うそ!」
勇気は、岡本の、背中に隠れた。
「・・よぉ、岡本ー!遅かったな」
「・・すまんなぁー、先輩。こいつが、メガネ外すと、見えやん!って、騒いで」
「・・・メガネ?そんなことより、待ちくたびれた!なぁ、みと。」
「・・あー!もう!限界!!岡本、メガネ返して!」
その彼は、サッと、岡本くんから、メガネを奪うと、
「・・えぇ?メガネ、かけるんか?」
「・・だって、よく見えないし。これが、本当の俺だし?」
メガネを、かけたその男子は・・・
「・・えっ?勇気くん?」
「・・・えっ?みとさん?」
勇気くんだった。
「・・えっ?二人知り合い?どういうことや?」
「・・・ってか、みと、なんで、知ってるんだよ」
「・・・お兄ちゃん、彼なんや。さっき言ってた、運命の人って」
「・・運命の人?」
勇気くんが、そう呟いたのを、聞いて
「・・岡本の紹介したい人って、みとさんだったんだ。すごい、偶然」
あれから、まだ、なんにちも経ってないのに。
「・・・?」
「・・なぁ~んや、もう会ってたんやー!ほんま、世の中は狭いなぁ~」
「・・・俺ら、邪魔だから、帰るか岡本。」
「・・えっ?帰るんか?」
「・・だって、紹介しなくても、二人知り合ってたわけだし、これこそ、運命の出会いじゃん?」
「・・そ、そうやけど」
岡本は、少しだけ不安げだった。
「・・みと、よかったじゃん、運命の人に、再会できて」
「・・・うん、そうだね」
「・・俺と、岡本はこのまま消えるから、あとはお二人で、ごゆっくり~」
「・・えっ?」
お兄ちゃんは、岡本くんの腕を引っ張り連れていった。
「・・・お兄ちゃんたち、行ってしもた」
「・・・そうだね」
「・・・どうする?勇気くん」
「みとさんの勘、当たったね。この前、“また、会う気がする”って、いってくれたでしょ?」
「ほんまは、ちょっと、冗談やったんやけど。信じてみるもんやな!」
「そうだね」
「せっかく再会したんだし、映画でも見ようか?息抜きしたかったから、ちょうどいいや」
「うん!行きたい!あのね!」
「勇気・・・・?」
うちと、勇気くんの後ろに、いた女の人は、そこで立ち尽くしていた。
彼女は、勇気くんの想い人、“美鈴さん”だった。
うちも、勇気くんも気付いていなかった。
ここで、運命のルーレットが、廻りはじめていることに・・・・。
「勇気くん、今日は、おおきに。楽しかったわ」
「俺も、楽しかったよ。うさぎのキーホルダーも、お揃いで、ゲットしたしね」
「ラッキーやったな。2つも一緒に落ちてきて」
「・・・あのさ、また、映画でもみない?」
「・・何言うとるんや。勇気くんは、好きな人に告白するんやろ?もうすぐバレンタインやし、逆チョコもありやで?
だって勇気くん、女ものの香水見ていたやろ?隠しても、無駄やで?」
「・・み、見ていたの?」
「・・もちろんや。少しだけ、目立ってたし」
「・・・俺の想いは、きっと届かない。どうせ、本気に思われていないしね」
「あかんよ、勇気くん。諦めたら。どうせ~だからって、思っていたら、後悔するよ?」
「・・・みとさん」
「・・勇気くん、名前の通り、“勇気出して”」
「・・・みとさん」
「「・あかんあかん?タメなんやから、さん付けしやんといて」
「・・いや、俺、なんか苦手でさ」
「よし、勇気くんに、指令を与える!」
「・・えっ?指令?」
「バレンタインまでに、告白すること!」
「バレンタインに、告白するのは、女の子だろ?」
「だからや!女から告白される勇気くんになれるように、うちも、協力するから!」
「・・・でも・・・・」
「四の五の言わない約束や!少なくても、少しは素直になるんや?わかった?」
「・・・うん、わかったよ」
「・・よし!今日は、帰ってよろしい!」
「・・あははっ!なんだよ、それ」
「・・あと、もうひとつ・・・・」
「・・・えっ?」
「・・・うちの前では、強がらんくてええよ」
「・・・・」
「・・タメなんやし、気を使わんと、何でも話して?」
「・・・みとさん、それは普通、男のセリフだろ?」
「・・あっ、そっか。そうだよね。でも、とにかく、ファイトや!勇気くん!」
「・・・ありがとう、みとさん」
「・・今日、ゲットしたうさぎのキーホルダーは、友情の証だね!」
うちは、にっこり勇気くんと、話ながら、歩いていた。
勇気くんは、このあとうちを、家まで送ってくれた。
「・・おやすみ、みとさん」
「・・うん、おやすみ、勇気くん。気をつけて帰ってね。」
うちは、なんだか悲しそうな勇気くんの顔が、ずっと頭から離れずにいた。
ある、占いの館にはいり、占い師にこういわれた。
「近くにいますよ。近いうちに会えるはずです。」
「ほんまに?それってそれって、」
この人ですか?
と、写真を見せたくなったけど・・・・
こういうのって、じぶんでなんとかしやなあかんもんやんな。
そう、言い聞かせて。
「ありがとうございます。がんばります」
そう言って、占いの館を出てきた。
「やった!兄ちゃんに、告白されるんかも。それとも、うちが、告白したら、うまくいくようになるんかな❤️」
うちの名前は、小山みと。
「みと、どうだったの?」
「うん、あのね!」
「みと、嬉しそうだね」
一緒にいるのは、親友の、戸川留美。
「そう?そうかな」
うちの、憧れの人・・・好きな人は、従兄弟の兄ちゃん。
小さい頃、よく遊んでくれたにいちゃんは、うちにとっては、憧れの人で、初恋の人やった。
で、その憧れの、従兄弟の兄ちゃんは、いまや、人気アイドル「SAMURAI」の一員、森
山幸助だ。
彼を、男の人と意識したんは、彼がグループに入ってからや。
「自慢の兄ちゃんや」
「みと?」
「留美、うち、兄ちゃんに告白されるんかもしれやん。そうなったら、カメラマンの夢ますます諦められやん!」
「みとったら、そんなことになったら、彼は、仕事やりにくいんじゃない?いまでも、みとは、ファンレター渡してくれって頼まれるんでしょ?」
「そうなんやけど~」
「でも、占い当たるといいね!幸助から、告白されるかは、ともかく、運命の出会いをするんでしょ?」
「いや!絶対告白されるんやもん」
そう、決めつけていた。すごく、期待していた。
兄ちゃんから、話があるって呼び出されて、浮かれまくるうちやった。
兄ちゃんのファンに知られたらきっと、きっとなにされるかわからんレベルやけど。
「みと・・・・・」
「・・・はい!」
「・・みと、俺のこと好きなのか?」
「・・・好きや。ファンとか、兄ちゃんだからとか、関係なくちゃんと、男子として好きや!」
「・・・・・ごめん。俺、みとの気持ちに答えられないや。」
「・・・・・それって・・・・・」
「・・・俺、好きな女いるから」
そうだった。
兄ちゃんは、ずっとずっと思ってる人いたんやった。
でも、それって・・・・・
「やっぱり、ちがったんや。」
「・・・やっぱりってなんだよ。」
「・・・兄ちゃんの好きな人って、千里さんやろ?」
「・・・・・なんで、知ってるんだよ。たしかに、前までは妹の千紗が好きだった。でもな、俺がいま好きなのは、姉の千里の方だ。」
「・・・・」
「だから、お前の気持ちに答えられない。・・まぁ、いまは、片想いに近いけどな」
「・・・片思い?まだ、好きっていってないんか?」
「・・・・って、なんでこんなことみとに話してんだろ。」
なんか照れてる兄ちゃんが、可愛らしかった。
「・・・兄ちゃんの恋、うまくいくとええな。」
「・・・えっ?」
「本当は、期待していたんやけど・・・・・でも、兄ちゃんの好きな人が、千里さんでよかった。」
「・・・なんだよそれ」
うちは、この前、千里さんに会ったと、いうことは、内緒にしておこう。
「・・・うちな、占い師に、「運命の人に出会える」って言われたんや。だから、兄ちゃんに告白されるって思い込んでて・・・・」
「・・・運命の人に出会うんなら、それは違うじゃねーの?」
「・・・うん。いま、わかった。兄ちゃんは、兄ちゃんや。うちの自慢の兄ちゃんのままなんやなって。」
「・・・自慢は、言い過ぎだよ」
「・・・けど、諦めやん。うちは、信じることにするわ。だから、兄ちゃん、千里さんと、幸せにな」
「・・・あぁ、ありがと」
「・・・じゃ、あんまり、長話してると、ファンが気づくから、行くわ!」
「・・わかった。じゃ、またな」
「・・・うん!」
うちは、明るく別れた。
そのあと、うちは、気分を一新するために、部屋の模様替えをすることにした。
「きっと、出会えるやんな?運命の人に。」
それから、1ヶ月ぐらいしたときやった。
「はぁ、なんでうちこんなに買い込んでしたんやろ。」
この1ヶ月、いろいろレイアウトを、考えて部屋の模様替えをしてきた。
本を読んで、すきな色で揃えてみたりもした。
インテリアコーディネーターになった気分やった。
「次は、丸の内病院前~」
ピー
降りる停留所だったから、ボタンを押し、着いて降りるところだった。
「あっ!きみ!待って!!」
呼ばれたような気がしたけど、構わず降りた。
ドアがしまります。
「あっ!降ります!」
うちの、すぐあとに男の子がすぐ、降りてきた。
なぜだか、息が上がっている。
「きみ!まって!」
腕を掴まれた。
「あの?」
荷物忘れてるよ?ほら」
「えっ?あっ、すんません。あまりにも、多くて・・・・」
「よかったぁー!間に合って。車内は意外と混んでたし、、一番後ろからだったし。」
「あっ、ほんと、すみません。」
「重そうだね。何をそんなに買い込んだの?」
「新年過ぎてしもたけど、部屋の模様替え。」
「そうなんだ。心機一転ってやつ?」
「でも、うち、ほんまアホなことしたと思ってる。こんなに、買うてしまうやなんて。」
「・・・俺、降りるバス停ひとつ先なんだけど・・・・」
「・・・えっ?ええの?バス、もう発車するで?」
「・・・いいよ。ここからでも、近いし。それに、君の荷物すごく重そうでたくさんあるの気になったし。」
「優しいんやな。こんなに荷物持ってる女子、ありえやんのに。」
「・・俺、藤木勇気。君は?」
「うちは、小山みと。」
「降りたついでだ。荷物もってあげるよ」
「えっ?ええの?彼女さんとか、いるんやないの?」
彼が、ちらっと、その方向を、みた気がする。
「誰か・・・いるん?」
「・・・いいんだ。たぶん、俺の気持ちに気づかない人だし」
「・・・・たぶん?」
これが、うちと、勇気君との出会い。
うちにとって、これがかけがえのない出会いになるなんて、このときは、思っていなかったんや。
10分ほどあるいて、うちが住んでる、マンションまできた。
「おおきに、勇気さん。」
「勇気さんだなんて、なんかいやだな。俺、これでも、二十歳なんだけど?」
「えっ?うそや。うちと、タメなん?」
「えっ?タメって。みとさんも、二十歳?」
「見えんやろ?子供っぽいって、よく言われるから・・・・」
うちは、部屋を開けて、勇気君を、へやへいれた。
荷物運んでくれたお礼をしようと思っていたのに。
「・・・これ、ここでいい?」
なんと、荷物整理までつきあってくれた。
これ、未成年なら、訴えられてるかもしれやん。
知り合ったばかりやのに・・・
「おおきに、勇気君。一個手前で降ろさせたあげく、片付けまで手伝ってもらって・・・・」
「・・部屋の模様替えなんて必要ないじゃん。十分きれいだし。女の子の部屋って気がする」
「・・・・新年やし、気分一新したくて・・・でも、なかなかじぶんが納得する部屋にならなくてな。ほんまは、ずっと落ち込んでいたんや。」
「・・・それって、失恋したってこと?」
「・・ 当たりや。なんでわかったん?」
「・・・・そういうの、なんとなくわかる。女の子は、髪を切るとか、ジンクスあるよな。だけど・・・・」
「・・・勇気君も、そんなことあるん?」
「・・・半分当たり。一個手前で降りたのは、みとさんに、荷物を手渡すだけじゃなかったよ。」
「・・・本当は、誰かいたから・・・・。」
さっき、目線で、追いかけていた人・・・・・。
「・・本当はね、ちゃんとおいかけるつもりだった。」
「・・・ごめんな。うち、引き止めてしもたんやな?」
「・・・・いいんだよ。それより、もう、帰らなきゃ。」
「・・勇気君、大学生なんやな。その本重そう。なのに、荷物運んでくれて・・・・ほんと、優しい人・・・・」
「医者になろうと思ってさ」
「すごい!頭ええんやな!うちはな・・・カメラマン目指してるんや」
「・・・そっか、だから、写真・・・・ みとさんらしい・・・・」
「・・・うでは、まだまだなんやけど・・・・」
「・・・そんなことないよ」
「・・・あはは。おおきに。」
「それじゃ、お邪魔しました。」
「まって!勇気君。」
「えっ?」
「・・・これ、今日のお礼。すっかり、わすれるところやった。」
うちは、缶コーヒーを、渡した。
「・・たいしたことしてないに、ありがとう。」
「なんかね、勇気くんとは、これっきりじゃない気がするんだ」
「・・・じゃあさ、その時は、声かけてよ。知り合った仲だし。」
「・・えっ?ええの?」
「・・いいよ。だって、俺も、みとさんとはまた、会う気がするから」
「・・うん、うちも、そんな気がする」
「・・・じゃあ、また」
勇気くんは、にっこり笑うと、ドアを閉めた。
・・・これが、運命・・・・
そんな“運命の日”は、来た!
なんと、また、お兄ちゃんから、連絡を受けて、
「みと、今日、暇か?」
「日曜日やし、暇と言えば暇やけど・・・、お兄ちゃんは、大丈夫なん?」
「まぁ、細かいことは、気にするな。お前に、男を、紹介してやるよ」
「・・え~?うちは、お兄ちゃんに、失恋したのに、そのお兄ちゃんに紹介されるやなんて・・・・」
みんな、聞いたら、なんと言うやろ。
「・・そんなこというなよ~?顔見れば、お前も気に入るんじゃないねぇかな」
「・・っていうか、こんな町中で、一緒にいるうちら、あきらかに、怪しいよね?」
「・えっ?」
「・・だって、お兄ちゃんは・・・・ちょうにんきアイドル・・・サムラ・・・」
「・・バカ!声が大きいよ!バレるだろ!」
お兄ちゃんは、うちの口を押さえた。
「・・・ええやん?バレても。いとこのお兄ちゃんが、スーパーアイドルやなんて、けっこう自慢やもん。」
「・・あのなぁ!」
「・・ふふっ!なぁんて、嘘やわ。」
「・・・みと」
「・・・兄ちゃんが、いとこってだけで、近づいてくる女子がいて、うちに気がないとわかったら、逆に嫌がらせするんやで?うちは、はじめから、ただのいとこやのに・・・・」
「・・おまえには、悪いことしたから、せめてと思って」
「・・おおきに。でも、うちな、この間、ちょっとええ男子におうたんや」
「・・へぇ、そりゃ、よかったじゃん」
「・・うん。それが、運命ならええんやけど。」
「信じれば、いいんじゃねぇかな。みとが、それを信じれば、運命は、動くと思うぜ?」
「おおきに、お兄ちゃん!
で?今日は、どんな人、紹介してくれるん?」
「・・それがさぁ、岡本の、元クラスメイトなんだってさ」
「・・・岡本って・・・
えっ?メンバーの、岡本くん?」
同じSAMURAIのメンバー、岡本くんから紹介してもらえるやなんて!ますます、ドキドキしてきた!
「・・ったく、背中はやめろよ」
うちは、ドキドキしながら、待っていた。
その頃・・・
「・・なぁ、岡本~!!俺、メガネないと、ほとんどみえないんだ。勘弁してよ」
「・・あかん、あかん。あんさんは、メガネないほうが、イケメンなんやから。」
「・・・で?なんで俺に、女の子紹介してくれようとしてるの??忙しいんだろ?」
「・・・おまえ、忘れたんか?言うてたやん!誰か紹介してよ!って」
「・・言ったかなぁ?」
「・・・それとも、美鈴さんのこと、忘れられやんのか?」
「・・・・・・」
「・・ええかげんあきらめて、気分一新したらどうや?」
「岡本先輩が、いとこの女の子、紹介してくれるんや」
「・・・ふーん、いとこね」
「・・ここまできて、逃げるとは言わせやんで?
「・・おまえって、そんなキャラだったっけ?」
「・・ふふふ、ファンが知らない俺をおまえは、知ってるんやで?どうや?惚れたか?」
「・・・なんで、おれが、おまえに惚れるんだよ(笑)
それより、俺、大学の宿題山積みで、忙しいんだけど?手伝ってくれるのか?」
「・・すまんなぁー、なんやかんやで、約束の場所に着いたで?」
「・・えっ?うそ!」
勇気は、岡本の、背中に隠れた。
「・・よぉ、岡本ー!遅かったな」
「・・すまんなぁー、先輩。こいつが、メガネ外すと、見えやん!って、騒いで」
「・・・メガネ?そんなことより、待ちくたびれた!なぁ、みと。」
「・・あー!もう!限界!!岡本、メガネ返して!」
その彼は、サッと、岡本くんから、メガネを奪うと、
「・・えぇ?メガネ、かけるんか?」
「・・だって、よく見えないし。これが、本当の俺だし?」
メガネを、かけたその男子は・・・
「・・えっ?勇気くん?」
「・・・えっ?みとさん?」
勇気くんだった。
「・・えっ?二人知り合い?どういうことや?」
「・・・ってか、みと、なんで、知ってるんだよ」
「・・・お兄ちゃん、彼なんや。さっき言ってた、運命の人って」
「・・運命の人?」
勇気くんが、そう呟いたのを、聞いて
「・・岡本の紹介したい人って、みとさんだったんだ。すごい、偶然」
あれから、まだ、なんにちも経ってないのに。
「・・・?」
「・・なぁ~んや、もう会ってたんやー!ほんま、世の中は狭いなぁ~」
「・・・俺ら、邪魔だから、帰るか岡本。」
「・・えっ?帰るんか?」
「・・だって、紹介しなくても、二人知り合ってたわけだし、これこそ、運命の出会いじゃん?」
「・・そ、そうやけど」
岡本は、少しだけ不安げだった。
「・・みと、よかったじゃん、運命の人に、再会できて」
「・・・うん、そうだね」
「・・俺と、岡本はこのまま消えるから、あとはお二人で、ごゆっくり~」
「・・えっ?」
お兄ちゃんは、岡本くんの腕を引っ張り連れていった。
「・・・お兄ちゃんたち、行ってしもた」
「・・・そうだね」
「・・・どうする?勇気くん」
「みとさんの勘、当たったね。この前、“また、会う気がする”って、いってくれたでしょ?」
「ほんまは、ちょっと、冗談やったんやけど。信じてみるもんやな!」
「そうだね」
「せっかく再会したんだし、映画でも見ようか?息抜きしたかったから、ちょうどいいや」
「うん!行きたい!あのね!」
「勇気・・・・?」
うちと、勇気くんの後ろに、いた女の人は、そこで立ち尽くしていた。
彼女は、勇気くんの想い人、“美鈴さん”だった。
うちも、勇気くんも気付いていなかった。
ここで、運命のルーレットが、廻りはじめていることに・・・・。
「勇気くん、今日は、おおきに。楽しかったわ」
「俺も、楽しかったよ。うさぎのキーホルダーも、お揃いで、ゲットしたしね」
「ラッキーやったな。2つも一緒に落ちてきて」
「・・・あのさ、また、映画でもみない?」
「・・何言うとるんや。勇気くんは、好きな人に告白するんやろ?もうすぐバレンタインやし、逆チョコもありやで?
だって勇気くん、女ものの香水見ていたやろ?隠しても、無駄やで?」
「・・み、見ていたの?」
「・・もちろんや。少しだけ、目立ってたし」
「・・・俺の想いは、きっと届かない。どうせ、本気に思われていないしね」
「あかんよ、勇気くん。諦めたら。どうせ~だからって、思っていたら、後悔するよ?」
「・・・みとさん」
「・・勇気くん、名前の通り、“勇気出して”」
「・・・みとさん」
「「・あかんあかん?タメなんやから、さん付けしやんといて」
「・・いや、俺、なんか苦手でさ」
「よし、勇気くんに、指令を与える!」
「・・えっ?指令?」
「バレンタインまでに、告白すること!」
「バレンタインに、告白するのは、女の子だろ?」
「だからや!女から告白される勇気くんになれるように、うちも、協力するから!」
「・・・でも・・・・」
「四の五の言わない約束や!少なくても、少しは素直になるんや?わかった?」
「・・・うん、わかったよ」
「・・よし!今日は、帰ってよろしい!」
「・・あははっ!なんだよ、それ」
「・・あと、もうひとつ・・・・」
「・・・えっ?」
「・・・うちの前では、強がらんくてええよ」
「・・・・」
「・・タメなんやし、気を使わんと、何でも話して?」
「・・・みとさん、それは普通、男のセリフだろ?」
「・・あっ、そっか。そうだよね。でも、とにかく、ファイトや!勇気くん!」
「・・・ありがとう、みとさん」
「・・今日、ゲットしたうさぎのキーホルダーは、友情の証だね!」
うちは、にっこり勇気くんと、話ながら、歩いていた。
勇気くんは、このあとうちを、家まで送ってくれた。
「・・おやすみ、みとさん」
「・・うん、おやすみ、勇気くん。気をつけて帰ってね。」
うちは、なんだか悲しそうな勇気くんの顔が、ずっと頭から離れずにいた。