「あなたは、運命の出会いを信じますか?」

ある、占いの館にはいり、占い師にこういわれた。

「近くにいますよ。近いうちに会えるはずです。」

「ほんまに?それってそれって、」

この人ですか?

と、写真を見せたくなったけど・・・・

こういうのって、じぶんでなんとかしやなあかんもんやんな。

そう、言い聞かせて。

「ありがとうございます。がんばります」

そう言って、占いの館を出てきた。

「やった!兄ちゃんに、告白されるんかも。それとも、うちが、告白したら、うまくいくようになるんかな❤️」

うちの名前は、小山みと。

「みと、どうだったの?」

「うん、あのね!」

「みと、嬉しそうだね」

一緒にいるのは、親友の、戸川留美。

「そう?そうかな」

うちの、憧れの人・・・好きな人は、従兄弟の兄ちゃん。

小さい頃、よく遊んでくれたにいちゃんは、うちにとっては、憧れの人で、初恋の人やった。

で、その憧れの、従兄弟の兄ちゃんは、いまや、人気アイドル「SAMURAI」の一員、森

山幸助だ。

彼を、男の人と意識したんは、彼がグループに入ってからや。

「自慢の兄ちゃんや」

「みと?」

「留美、うち、兄ちゃんに告白されるんかもしれやん。そうなったら、カメラマンの夢ますます諦められやん!」

「みとったら、そんなことになったら、彼は、仕事やりにくいんじゃない?いまでも、みとは、ファンレター渡してくれって頼まれるんでしょ?」

「そうなんやけど~」

「でも、占い当たるといいね!幸助から、告白されるかは、ともかく、運命の出会いをするんでしょ?」

「いや!絶対告白されるんやもん」

そう、決めつけていた。すごく、期待していた。

兄ちゃんから、話があるって呼び出されて、浮かれまくるうちやった。

兄ちゃんのファンに知られたらきっと、きっとなにされるかわからんレベルやけど。

「みと・・・・・」

「・・・はい!」

「・・みと、俺のこと好きなのか?」

「・・・好きや。ファンとか、兄ちゃんだからとか、関係なくちゃんと、男子として好きや!」

「・・・・・ごめん。俺、みとの気持ちに答えられないや。」

「・・・・・それって・・・・・」

「・・・俺、好きな女いるから」

そうだった。

兄ちゃんは、ずっとずっと思ってる人いたんやった。

でも、それって・・・・・

「やっぱり、ちがったんや。」

「・・・やっぱりってなんだよ。」

「・・・兄ちゃんの好きな人って、千里さんやろ?」

「・・・・・なんで、知ってるんだよ。たしかに、前までは妹の千紗が好きだった。でもな、俺がいま好きなのは、姉の千里の方だ。」

「・・・・」

「だから、お前の気持ちに答えられない。・・まぁ、いまは、片想いに近いけどな」

「・・・片思い?まだ、好きっていってないんか?」

「・・・・って、なんでこんなことみとに話してんだろ。」

なんか照れてる兄ちゃんが、可愛らしかった。

「・・・兄ちゃんの恋、うまくいくとええな。」

「・・・えっ?」

「本当は、期待していたんやけど・・・・・でも、兄ちゃんの好きな人が、千里さんでよかった。」

「・・・なんだよそれ」

うちは、この前、千里さんに会ったと、いうことは、内緒にしておこう。



「・・・うちな、占い師に、「運命の人に出会える」って言われたんや。だから、兄ちゃんに告白されるって思い込んでて・・・・」

「・・・運命の人に出会うんなら、それは違うじゃねーの?」

「・・・うん。いま、わかった。兄ちゃんは、兄ちゃんや。うちの自慢の兄ちゃんのままなんやなって。」

「・・・自慢は、言い過ぎだよ」

「・・・けど、諦めやん。うちは、信じることにするわ。だから、兄ちゃん、千里さんと、幸せにな」

「・・・あぁ、ありがと」

「・・・じゃ、あんまり、長話してると、ファンが気づくから、行くわ!」

「・・わかった。じゃ、またな」

「・・・うん!」

うちは、明るく別れた。

そのあと、うちは、気分を一新するために、部屋の模様替えをすることにした。

「きっと、出会えるやんな?運命の人に。」

それから、1ヶ月ぐらいしたときやった。



「はぁ、なんでうちこんなに買い込んでしたんやろ。」

この1ヶ月、いろいろレイアウトを、考えて部屋の模様替えをしてきた。

本を読んで、すきな色で揃えてみたりもした。

インテリアコーディネーターになった気分やった。

「次は、丸の内病院前~」

ピー

降りる停留所だったから、ボタンを押し、着いて降りるところだった。

「あっ!きみ!待って!!」

呼ばれたような気がしたけど、構わず降りた。

ドアがしまります。

「あっ!降ります!」

うちの、すぐあとに男の子がすぐ、降りてきた。

なぜだか、息が上がっている。

「きみ!まって!」

腕を掴まれた。

「あの?」

荷物忘れてるよ?ほら」

「えっ?あっ、すんません。あまりにも、多くて・・・・」

「よかったぁー!間に合って。車内は意外と混んでたし、、一番後ろからだったし。」

「あっ、ほんと、すみません。」

「重そうだね。何をそんなに買い込んだの?」

「新年過ぎてしもたけど、部屋の模様替え。」

「そうなんだ。心機一転ってやつ?」

「でも、うち、ほんまアホなことしたと思ってる。こんなに、買うてしまうやなんて。」

「・・・俺、降りるバス停ひとつ先なんだけど・・・・」

「・・・えっ?ええの?バス、もう発車するで?」

「・・・いいよ。ここからでも、近いし。それに、君の荷物すごく重そうでたくさんあるの気になったし。」

「優しいんやな。こんなに荷物持ってる女子、ありえやんのに。」

「・・俺、藤木勇気。君は?」

「うちは、小山みと。」

「降りたついでだ。荷物もってあげるよ」

「えっ?ええの?彼女さんとか、いるんやないの?」

彼が、ちらっと、その方向を、みた気がする。

「誰か・・・いるん?」

「・・・いいんだ。たぶん、俺の気持ちに気づかない人だし」

「・・・・たぶん?」

これが、うちと、勇気君との出会い。

うちにとって、これがかけがえのない出会いになるなんて、このときは、思っていなかったんや。



10分ほどあるいて、うちが住んでる、マンションまできた。

「おおきに、勇気さん。」

「勇気さんだなんて、なんかいやだな。俺、これでも、二十歳なんだけど?」

「えっ?うそや。うちと、タメなん?」

「えっ?タメって。みとさんも、二十歳?」

「見えんやろ?子供っぽいって、よく言われるから・・・・」

うちは、部屋を開けて、勇気君を、へやへいれた。

荷物運んでくれたお礼をしようと思っていたのに。

「・・・これ、ここでいい?」

なんと、荷物整理までつきあってくれた。

これ、未成年なら、訴えられてるかもしれやん。

知り合ったばかりやのに・・・

「おおきに、勇気君。一個手前で降ろさせたあげく、片付けまで手伝ってもらって・・・・」

「・・部屋の模様替えなんて必要ないじゃん。十分きれいだし。女の子の部屋って気がする」

「・・・・新年やし、気分一新したくて・・・でも、なかなかじぶんが納得する部屋にならなくてな。ほんまは、ずっと落ち込んでいたんや。」

「・・・それって、失恋したってこと?」

「・・ 当たりや。なんでわかったん?」

「・・・・そういうの、なんとなくわかる。女の子は、髪を切るとか、ジンクスあるよな。だけど・・・・」

「・・・勇気君も、そんなことあるん?」

「・・・半分当たり。一個手前で降りたのは、みとさんに、荷物を手渡すだけじゃなかったよ。」

「・・・本当は、誰かいたから・・・・。」

さっき、目線で、追いかけていた人・・・・・。

「・・本当はね、ちゃんとおいかけるつもりだった。」

「・・・ごめんな。うち、引き止めてしもたんやな?」

「・・・・いいんだよ。それより、もう、帰らなきゃ。」

「・・勇気君、大学生なんやな。その本重そう。なのに、荷物運んでくれて・・・・ほんと、優しい人・・・・」

「医者になろうと思ってさ」

「すごい!頭ええんやな!うちはな・・・カメラマン目指してるんや」

「・・・そっか、だから、写真・・・・ みとさんらしい・・・・」

「・・・うでは、まだまだなんやけど・・・・」

「・・・そんなことないよ」

「・・・あはは。おおきに。」

「それじゃ、お邪魔しました。」

「まって!勇気君。」

「えっ?」

「・・・これ、今日のお礼。すっかり、わすれるところやった。」

うちは、缶コーヒーを、渡した。

「・・たいしたことしてないに、ありがとう。」

「なんかね、勇気くんとは、これっきりじゃない気がするんだ」

「・・・じゃあさ、その時は、声かけてよ。知り合った仲だし。」

「・・えっ?ええの?」

「・・いいよ。だって、俺も、みとさんとはまた、会う気がするから」

「・・うん、うちも、そんな気がする」

「・・・じゃあ、また」

勇気くんは、にっこり笑うと、ドアを閉めた。

・・・これが、運命・・・・

そんな“運命の日”は、来た!

なんと、また、お兄ちゃんから、連絡を受けて、

「みと、今日、暇か?」

「日曜日やし、暇と言えば暇やけど・・・、お兄ちゃんは、大丈夫なん?」

「まぁ、細かいことは、気にするな。お前に、男を、紹介してやるよ」

「・・え~?うちは、お兄ちゃんに、失恋したのに、そのお兄ちゃんに紹介されるやなんて・・・・」

みんな、聞いたら、なんと言うやろ。

「・・そんなこというなよ~?顔見れば、お前も気に入るんじゃないねぇかな」

「・・っていうか、こんな町中で、一緒にいるうちら、あきらかに、怪しいよね?」

「・えっ?」

「・・だって、お兄ちゃんは・・・・ちょうにんきアイドル・・・サムラ・・・」

「・・バカ!声が大きいよ!バレるだろ!」

お兄ちゃんは、うちの口を押さえた。

「・・・ええやん?バレても。いとこのお兄ちゃんが、スーパーアイドルやなんて、けっこう自慢やもん。」

「・・あのなぁ!」

「・・ふふっ!なぁんて、嘘やわ。」

「・・・みと」

「・・・兄ちゃんが、いとこってだけで、近づいてくる女子がいて、うちに気がないとわかったら、逆に嫌がらせするんやで?うちは、はじめから、ただのいとこやのに・・・・」

「・・おまえには、悪いことしたから、せめてと思って」

「・・おおきに。でも、うちな、この間、ちょっとええ男子におうたんや」

「・・へぇ、そりゃ、よかったじゃん」

「・・うん。それが、運命ならええんやけど。」

「信じれば、いいんじゃねぇかな。みとが、それを信じれば、運命は、動くと思うぜ?」

「おおきに、お兄ちゃん!

で?今日は、どんな人、紹介してくれるん?」

「・・それがさぁ、岡本の、元クラスメイトなんだってさ」

「・・・岡本って・・・

えっ?メンバーの、岡本くん?」

同じSAMURAIのメンバー、岡本くんから紹介してもらえるやなんて!ますます、ドキドキしてきた!

「・・ったく、背中はやめろよ」

うちは、ドキドキしながら、待っていた。

その頃・・・

「・・なぁ、岡本~!!俺、メガネないと、ほとんどみえないんだ。勘弁してよ」

「・・あかん、あかん。あんさんは、メガネないほうが、イケメンなんやから。」

「・・・で?なんで俺に、女の子紹介してくれようとしてるの??忙しいんだろ?」

「・・・おまえ、忘れたんか?言うてたやん!誰か紹介してよ!って」

「・・言ったかなぁ?」

「・・・それとも、美鈴さんのこと、忘れられやんのか?」

「・・・・・・」

「・・ええかげんあきらめて、気分一新したらどうや?」

「岡本先輩が、いとこの女の子、紹介してくれるんや」

「・・・ふーん、いとこね」

「・・ここまできて、逃げるとは言わせやんで?

「・・おまえって、そんなキャラだったっけ?」

「・・ふふふ、ファンが知らない俺をおまえは、知ってるんやで?どうや?惚れたか?」

「・・・なんで、おれが、おまえに惚れるんだよ(笑)

それより、俺、大学の宿題山積みで、忙しいんだけど?手伝ってくれるのか?」

「・・すまんなぁー、なんやかんやで、約束の場所に着いたで?」

「・・えっ?うそ!」

勇気は、岡本の、背中に隠れた。

「・・よぉ、岡本ー!遅かったな」

「・・すまんなぁー、先輩。こいつが、メガネ外すと、見えやん!って、騒いで」

「・・・メガネ?そんなことより、待ちくたびれた!なぁ、みと。」

「・・あー!もう!限界!!岡本、メガネ返して!」

その彼は、サッと、岡本くんから、メガネを奪うと、

「・・えぇ?メガネ、かけるんか?」

「・・だって、よく見えないし。これが、本当の俺だし?」

メガネを、かけたその男子は・・・

「・・えっ?勇気くん?」

「・・・えっ?みとさん?」

勇気くんだった。

「・・えっ?二人知り合い?どういうことや?」

「・・・ってか、みと、なんで、知ってるんだよ」

「・・・お兄ちゃん、彼なんや。さっき言ってた、運命の人って」

「・・運命の人?」

勇気くんが、そう呟いたのを、聞いて

「・・岡本の紹介したい人って、みとさんだったんだ。すごい、偶然」

あれから、まだ、なんにちも経ってないのに。

「・・・?」

「・・なぁ~んや、もう会ってたんやー!ほんま、世の中は狭いなぁ~」

「・・・俺ら、邪魔だから、帰るか岡本。」

「・・えっ?帰るんか?」

「・・だって、紹介しなくても、二人知り合ってたわけだし、これこそ、運命の出会いじゃん?」

「・・そ、そうやけど」

岡本は、少しだけ不安げだった。

「・・みと、よかったじゃん、運命の人に、再会できて」

「・・・うん、そうだね」

「・・俺と、岡本はこのまま消えるから、あとはお二人で、ごゆっくり~」

「・・えっ?」

お兄ちゃんは、岡本くんの腕を引っ張り連れていった。

「・・・お兄ちゃんたち、行ってしもた」

「・・・そうだね」

「・・・どうする?勇気くん」

「みとさんの勘、当たったね。この前、“また、会う気がする”って、いってくれたでしょ?」

「ほんまは、ちょっと、冗談やったんやけど。信じてみるもんやな!」

「そうだね」

「せっかく再会したんだし、映画でも見ようか?息抜きしたかったから、ちょうどいいや」

「うん!行きたい!あのね!」

「勇気・・・・?」

うちと、勇気くんの後ろに、いた女の人は、そこで立ち尽くしていた。

彼女は、勇気くんの想い人、“美鈴さん”だった。

うちも、勇気くんも気付いていなかった。

ここで、運命のルーレットが、廻りはじめていることに・・・・。

「勇気くん、今日は、おおきに。楽しかったわ」

「俺も、楽しかったよ。うさぎのキーホルダーも、お揃いで、ゲットしたしね」

「ラッキーやったな。2つも一緒に落ちてきて」

「・・・あのさ、また、映画でもみない?」

「・・何言うとるんや。勇気くんは、好きな人に告白するんやろ?もうすぐバレンタインやし、逆チョコもありやで?

だって勇気くん、女ものの香水見ていたやろ?隠しても、無駄やで?」

「・・み、見ていたの?」

「・・もちろんや。少しだけ、目立ってたし」

「・・・俺の想いは、きっと届かない。どうせ、本気に思われていないしね」

「あかんよ、勇気くん。諦めたら。どうせ~だからって、思っていたら、後悔するよ?」

「・・・みとさん」

「・・勇気くん、名前の通り、“勇気出して”」

「・・・みとさん」

「「・あかんあかん?タメなんやから、さん付けしやんといて」

「・・いや、俺、なんか苦手でさ」

「よし、勇気くんに、指令を与える!」

「・・えっ?指令?」

「バレンタインまでに、告白すること!」

「バレンタインに、告白するのは、女の子だろ?」

「だからや!女から告白される勇気くんになれるように、うちも、協力するから!」

「・・・でも・・・・」

「四の五の言わない約束や!少なくても、少しは素直になるんや?わかった?」

「・・・うん、わかったよ」

「・・よし!今日は、帰ってよろしい!」

「・・あははっ!なんだよ、それ」

「・・あと、もうひとつ・・・・」

「・・・えっ?」

「・・・うちの前では、強がらんくてええよ」

「・・・・」

「・・タメなんやし、気を使わんと、何でも話して?」

「・・・みとさん、それは普通、男のセリフだろ?」

「・・あっ、そっか。そうだよね。でも、とにかく、ファイトや!勇気くん!」

「・・・ありがとう、みとさん」

「・・今日、ゲットしたうさぎのキーホルダーは、友情の証だね!」

うちは、にっこり勇気くんと、話ながら、歩いていた。

勇気くんは、このあとうちを、家まで送ってくれた。

「・・おやすみ、みとさん」

「・・うん、おやすみ、勇気くん。気をつけて帰ってね。」

うちは、なんだか悲しそうな勇気くんの顔が、ずっと頭から離れずにいた。