僕達は女の子の正体が気になりつつも今は友香さんを家に送るのが最優先と判断し、通り過ぎた。しばらく進むと50メートルほど先に城のような家が見えた。
『わぁ、すげぇ、この町にあんな家あったんだ。』
『そっかー、小坂くんは友香さんの家見るの初めてか。』
嘘だろ。あんなの貴族の家じゃないか。どおりで友香さん、喋り方が綺麗なのか。同じ町の同じ高校一年生なのにこんなにも違うのかと落ち込んだ。
『じゃあ、ここまでで。では明日は顧問の先生を探しましょう、では二人とも気をつけて』
別れの挨拶をし、三人はそれぞれ違う方向へ進んだ。

『はぁー、疲れた。』
僕は玄関に倒れこんだ。だが返事はない。俺の家は父さんは二年前に他界し母親は一人で働いているためいつも家には誰もいない。母の顔を見るのは週に2.3回あればいいくらいだ。いつものように掃除、洗濯、夕食、風呂をこなし、そして寝る。ベットの上で色々考えた。俺はこの先やっていけるのか、合唱部の顧問と部員をどうするか、今後友香さんとどんな関係に...そんなことを考えていると朝が来た。眠い目を擦りながら時計を確認すると授業開始15分前。急いで支度をし、机の上にたまたまあったリンゴをかじりながら学校へ向かう。チャイムと同時にゴールした。勢いよくドアを開け、
『お、遅れてすいません』
一言だけいい席につこうとした瞬間またドアが開いた。
『お、遅れました。申し訳ない。』
志田だ。そういえば中学の頃もよく遅刻していた。俺たち二人を見て昨日は仏だった先生もさすがに呆れたらしい。
『二日目から遅刻とは...。小坂、志田、10分間だけ廊下に立っていなさい』
と言った。ありえない。俺は廊下に立たされることには怒っていない。志田と二人ということに怒っている。
『はーい。』
と少しめんどくさそうな返事をして志田は廊下に出た。そのあとに続いて俺も廊下に出た。はぁ地獄が始まる。そう思ったが以外にも志田は普通に話しかけてくる。
『お前、なんでここ来てモテてんの?』
『知らねぇよ。なんだ?またいじめるのか?』
俺はお前なんかと会話したくない。そんなことを思っていると志田は
『んなことしねぇよ、てかお前何部入るとか決めた?この学校部活強制らしいじゃん』
と言われたがなんとなく合唱部とは言いたくなかった俺はまだ決めてないと言った。
『あっそ、うちは決めたで』
一応聞いてやることにするが想像もしない単語が志田の口から飛び出した。
『合唱部』
『え、お前もしかして合唱部入んの?』
一応聞きなおす。何かの間違いだ。空耳空耳。だがその願いは天には届かない。
『そうだけど?悪い?たださ、この学校合唱部ないからあと4人と顧問の先生いるんだよねー。てことでよろしく部員第1号』
嘘だ。俺は自分の頬を強くつねった。痛い。夢じゃない。嘘だ。嘘だ。嘘だ。
『嘘だぁぁぁぁ!』
俺の叫びは学校内はもちろんだが、きっとこの町中に聞こえたに違いない。