しばらくすると女は
『あ、そうだった私から誘ったんだった』
と笑いながら言い出した。この女のことはやはりよく分からないが悪いヤツではなさそうだ。とりあえずここにいても仕方ないので小屋に帰ることにした。そういえばここはどこでどうすれば帰れるのだろうと女に聞いてみたが女も詳しく知らないらしい。
『そういえば名前は?』
僕は少し勇気を出して聞いてみた。
『鈴ってかいてりんだよ!』
元気に言ってきたのがムカつくことに少し可愛かった。鈴も嬉しそうだった。でもなんで僕は名前を思い出せないんだろう。と一瞬考えたが深くは考えず色々話していると小屋についた。どこから取ってきてるかは分からないが野菜と魚だけはあったので鈴ととりあえず夕食を取ることにした。この小屋には冷蔵庫やテレビなど以外は基本あるし最低限の生活はできる環境が整っていた。が問題だったのは鈴の料理の腕だ。基本調理方法は焼くのみ。とてもじゃないが美味しくはなかった。気づいたら僕が料理をしていた。簡単な鍋だが。鈴は
『すごいねー、料理したことあるの?』
と聞かれた。僕は頷き答えようとしたが、僕はなんで鍋の作り方を知っていたんだろう。ここに来てから全く昔のことを思い出せない。だから
『体が覚えてた。けどなんで作れたのかは分からない。』
と答えると鈴は
『私も分からないの。何でここにいるのかなんできみといるのか、ここに来てからどんどん記憶を失くしたんだ』
と珍しく優しい口調で悲しげに言った。すると続けてこう言った。
『私とあなたの違いが分かったかもしれない』
と笑いながら言った。どこがだよと言い僕達は鍋を囲んだ。けど鈴はどこか悲しい表情をしていた。