――そんな露骨に、武尊って名前出す⁉
今度は資料で顔を扇ぎ出した凪美子。
岡本は、すぐにそれが武尊だと分かった。
「お互い子供じゃないんだし、それよりも、ちゃんと向き合ってあげないと、武尊君が可哀想ですよ。やり切れなくて、気持ちをどこにも持って行けないですよ。社長もご自分の気持ちに素直になってみてはどうですか?」
「は、はい? わた、私が素直? ま、まるで私が武尊君を好きみたいじゃな~い」
――社長って恋愛の話になるとシャイというか、変に生真面目なのよね~
凪美子を見つめながら岡本は思った。
「年頃の子供がいるわけじゃないし、子供が手から離れたんなら、ご自分の第二の人生楽しまれたらいかがですか?」
岡本の言葉は、深く共感できた。それから凪美子は、武尊との出会いから今までのことを思い返していた。