凪美子の心は尋常ではなかった。武尊を嫌いなわけでない。
でも好きの意味が違う……⁉ とも言い切れない自分がいた。
有り得ない――何が⁉ だから自分の息子と変わらない年齢の子から、好きだなんて。でも気になっていたのも事実。
――何だか自分の気持ちが分からない。
社内のフロアーを、勢いよく通り抜けて行く凪美子。
その日以来、武尊に対する凪美子の態度がおかしい。
挨拶はするけれど、以前のようにちゃんと笑って顔を見てではない。
足を止めて世間話すらない、まるで避けているような。
他の人には立ち止まり、笑いながら話しをする、でも武尊には、
ただ「おはよう」の挨拶だけして行ってしまう。
よく昼食にも誘って来たのにそれすらなく、様子さえも見に来なくなった。
その態度はあからさまだった。
武尊は凪美子の、そんな態度にたまらなくなり、いつものように、フロアーを見回りに来る凪美子を、通路で待ち伏せした。