ある時、一人で作業している武尊の所に、凪美子がやって来た。いつものようにたわいもない話をしていた。
「蓮見社長、今幸せですか?」
「そうねぇ、幸せな方ね」
「よかった。自分の好きな人が、不幸だったら切ないですもんね」
「えっ⁉ 好きな人?」
穏やかな風の流れが、止まったようだった。
次の瞬間、
「好きです! 蓮見さん」
静かな声で武尊が言った。時間まで止まったように思えた。
「……⁉」
突然の武尊の告白に、声も出ない凪美子。
武尊のことを、息子のように思っていたが、それ以上のことは何もない。
「は、英君⁉ どうしたの? 急に」
「どうしたの?って、告白したんですけど」
真剣に答える武尊に、凪美子は戸惑う。
「じょ、冗談は止めて!」
笑って誤魔化す凪美子。
「冗談じゃないです! 本気です!」
「おばさんをからかうもんじゃないわ」
そう言うと足早に凪美子は去って行った。
――僕は本気なのに……
去って行く凪美子の後ろ姿を見送る武尊。