気付くと彼女のことを考えていたり、急に会いたくなったり、会う口実を探してみたり。

仕事場で偶然に会えるととても嬉しかったり。

彼女の表情一つ一つが頭から離れなくなって行った。

そんな日々から、一緒に食事をしている時のこと、武尊は、いつかの合同説明会で、高そうなスーツに身を包んだ、営業マン風の男と話していた、その男について聞いてみた。

「営業マン?」

しばらく凪美子は考えると、

「あぁ~、松本君のことかしら、彼がどうかした?」

武尊は少し躊躇いながら、

「その人とどういう関係なんですか?」

突然の質問に驚く凪美子。

「どうして?」

「あ、いえ、何となく……」

「松本君とは仕事仲間で、古い付き合いなの」

凪美子の言うには、松本という男は、四〇手前で、自分が起業して、初めて出した店舗に、最初に営業に来た人、松本自身も、アメリカンクラシックが好きで、趣味から意気投合し、それから色んな情報源であったりもするとかで、仕事を通して付き合いも長いとか。
 
聞きたいところが、聞き出せない武尊。

「それだけですか? つき合ってるとか」

思わず武尊は言ってしまった。

「まさか! 彼,、奥さんいるのよ? それだけよ? 何で?」

「いえ、別に」

少し安心した武尊。そして安心すると、お腹に違和感を覚え、思わず押さえた。