仕事の話が途切れ、武尊のまとめた資料を見ている凪美子を、チラリと武尊は見た。
――やっぱりこの人綺麗だ。それに何だか懐かしい感じがする。
どこかで出会ったような気もする。
真剣な眼差しも、何だか惹かれる。仕事に対する厳しい姿勢もまた素敵だった。
資料に向けられていた、彼女の目が、不意に武尊の方を見た。
驚く武尊に、「どうかした?」と凪美子。
びっくりして慌てて首を横に振る武尊。
するとまた凪美子は、資料に目をやった。
しばし沈黙のあと、
「蓮見社長って綺麗ですね」
顔をマジマジと見て武尊が言う。
「やだ! そんな距離で見ないで! しわがバレちゃうでしょ!」
顔を手で覆う凪美子。
「目立つシワなんてないですよ? でもあったとしても魅力の一つだと思いますけど」
「ほんとに? 上手いこと言うわね~、おばさんその気にさせたらこわいわよ~」
悪戯に凪美子は笑った。
「ホントです! オシャレだし、変な図々しさもないし、きらきらしててホントに綺麗だ」
「ありがと」
笑って返す凪美子に、余裕さえ感じられた。
自分に好意的な武尊を、嫌ではなかったし、むしろ以前よりも、さらに親しみを覚えた。
仕事が終わったあとも、武尊を誘って二人きりで食事をすることも多くなった。
交流を深めて行くにつれて、武尊の中に、凪美子対して、気持ちの変化を感じ始める。