梅雨も明けて、本格的な暑さがやって来た。

武尊も相変わらず、就活、バイト、大学に忙しくしていた。

朝からしっかり暑い中の目覚め、どんよりと背中も重かった。

武尊はトイレに行き、用を足したあと、違和感を覚える。

しかし毎日汗をかくから、体が脱水症状を起こしているんだなと、気にも留めなかった。

「武尊朝ごはん食べたの?」

母がうるさく言うのに対し、

「いらない!」

顔も見ずに答えて出て行こうとする武尊に、

「夏こそしっかり食べないと体力持たないわよ!」

武尊の背中に向かって言ったが、武尊は出て行ってしまった。

「作る身にもなりなさい! ほんと出先でもちゃんと食べてるのかしら!」

怒りながらも息子の体の心配をする母だった。

家には何となくいたくなかった。母親の毎日の苦労や、それでも自分を思う親心も分かっているつもりだった。

バイトしていたら、朝から溜息ばっかり吐く父親の顔も見なくて済む、借金のことも忘れられる。

就活も、何の目標もなく、ただ漠然と、大手に入れたらいいなんて、本気でやろうとはせず、ただ逃げでやっているのかもしれない。

卒論のために、図書館や大学に通い、時間になればバイトへ行く。

気付けば、バイトへ行くために、時間を潰しているようになっていた。