この一件の話は、巡って凪美子の耳に入り、

――うちの息子も、あれくらい頼り甲斐があればいいんだけど?

そう思いつつ、凪美子もまた、それとなく村上をサポートした。

また違う場面では、岡本が、仕事の都合で、どうしても娘のお迎えに行けないで困っていると、ちょうどタイミングよく、仕事を済ませて帰ろうとしていた武尊が、その話を聞いて、自分が代わりに迎えに行くと言った。

初めて武尊が迎えに行った時は、秀奈はとても照れくさそうにしていたが、これも回数を重ねて行くうちに、武尊が保育園に迎えに行くと、武尊を見つけると、秀奈の方から、

「たけうく~!」

と走り寄って来るようになった。
 
「今日は折り紙どんなの折った?」と武尊が聞くと、掛けているカバンから、つたない手つきで、折り紙を取り出して見せたり、描いたお絵描きの話をしたり、帰り道、手を繋いで、習った歌を武尊に聞かせたりと、秀奈との距離も、武尊は縮めて行った。