「自分がこんなだから、誰とでも挨拶して、打ち解けている君が、また仕事も卒なくこなすし、羨ましくて嫉妬していた」村上がそう言った。

村上の言葉はとても意外だった。

そして素直に武尊は、「そんな風に思って頂いてたなんて、何か嬉しいです」と答えた。

「俺は、この二年間、ただひたすら、ふて腐れていただけだった。自分の非を認めずに、やりたいことをさせてくれない社長を恨んだりした。二年もいるのに、PCすらまともに扱えない」

「なら今から、それを取り戻せばいいだけのことじゃないですか」

バカにせず答える武尊に、村上は心を許し始めた。

凪美子は知っていた、デザインに対する、村上の情熱を。

確かにこの二年間、先輩達の言うことは聞かず、事務職を馬鹿にしているような態度だった。

がしかし、一度、店舗に連れて行った時に、何気に店内をディスプレイさせた時、その才能を発揮させた。

陳列から人形ディスプレイをおしゃれに飾る。その時の村上の顔は、とても楽しそうだった。その場で自らの企画も言い出した。

買いたくなる、マネしたくなると、見せる技術の高さを持っていた。

才能ある人間を、凪美子は見捨てたりしない。

武尊と出会ったことで、村上にとっても、カームクロにとっても、色んな相乗効果をもたらすと信じていた。