「なんで俺たちから離れたんだ」

「別に離れたとかではなくて……」


私がゴニョゴニョ言ってると、「あぁん?」と威圧をかけてくる。

「……ごめんなさい」


私が謝ると「はあぁぁあ……」と大きなため息を1つして、ガクッとしゃがみこんだ。


「……宏平?」

「マジで心配した」


そう言った宏平の目は、少しだけ揺れていた。


「ついさっきまで後ろにいたはずなのにいつの間にか消えてて。見つけたら見つけたで男に絡まれてるし」

「ご、ごめん」


私がまた謝ると、宏平はゆっくりと私を包み込んだ。


「急に居なくなるなよ」


そう呟いた宏平の声は頼りなかった。


「うん、今度からは気をつける。ごめんね」


私はそう言って宏平の背中に手を回した。


「一紗は……、一紗だけは……。俺のそばから離れていかないで」


そう言った宏平は、腕にギュッと力を込めた。

それに応えるように、私もギュッと抱き返した。


……うん、安心する。

宏平の鼓動を感じて、落ち着いてきたかも。


「……なんか今ちょっとヤべーかも」

「なにが?」


私が宏平の顔を覗きこみ、パッチリと目が合う。

なんだか、……熱っぽいような……。


そう思ったとき、一瞬だけ唇から柔らかい感触が伝わってくる。


「なっなな……っ、なんで……っ!?」


私がそう言うと、宏平はニヤリと口の端を上げる。


「これ以上したら止まらなくなりそうだから、今日はここまでにしとこうかな♪」

「は……っ、はぁっ!?」


そう言うと、「ほら、早く行かねーと二人が心配してるぞ?」と言う。

私が驚いて口をパクパクさせていると、


「あれ、もしかして……続きしたいの?」


と爽やかな笑顔で聞いてくる。


「んなわけないでしょっ、バカこーーうっ!!!」