「お前には関係ないだろ。つーか、離せよ」
「嫌だ。だって離したらどっか行くもん」
「当たり前だろ?俺とお前は他人なんだから」
なぜか、彼のそばから離れたくない。
いつもならこんなこと思わないし、人の事なんて興味がないのに。
なのに、どうしてこんなに目が離せないんだろう。
そう言われて黙り込んでしまったわたしの腕をそっと下ろさせた彼。
そして、初めて目が合って少しだけ微笑んでくれたその瞬間、わたしは決して抱いてはいけない想いを抱いてしまったような気がした。
だけど、それに気づかないフリをした。
ダメ。絶対気づきたくない。
こんな感情はもうとっくの昔に捨てたんだ。
「……まあ、気持ちはありがてぇけどさ」
「っ、」
急に優しい声色になって、彼は自分が羽織っていた上着をわざわざ脱いでわたしの肩にかけてくれた。
優しいその行動にトクンと鼓動が高鳴った。
さっきまで冷たかったくせに。急に優しくするなんて反則だよ。