だって、呼び捨てにされるなんて思ってないじゃん。


学校でもみんな花咲って苗字で呼ぶし。


「昨日はさんきゅーな」


まさか、お礼を言われると思っていなかったので一瞬なんのことか分からなかった。


「いいよ、あんなの」

「カッコわりぃとこ見られたわ」

「ほんと情けなかったよ」


なんて、嘘だよ。

傷だらけでも、かっこいいと思った。

その傷に触れたいと思ったんだよ。

だから、カッコ悪くなんてないよ。


「うるせぇ」

「冗談だよ」


わたしがクスッと笑うと、隣から手が伸びてきてわたしの頭の上に乗せられた。


「お前、笑うとちょっと可愛くなるな」


よしよし、と不器用に撫でられた頭。
大きくてゴツゴツしていて男らしい手。


出雲さんの行動一つでこんなにも鼓動が高鳴っているなんて、信じたくない。