「……手」


思わず、声に出してしまった。

すると彼は表情をひとつも変えずに口を開いた。


「だって、寒いだろ。お前の手も冷てぇし」


さ、寒いからって普通恋人でもない人と手なんて繋がないよ。

なんでそんなにサラッとできるんだろう。

見た目で決めるのは失礼だと思うけど、派手な身なりから女慣れしてそうだからこそできることなのかもしれない。


「いや……」

「あ、そうそう。名前なんて言うんだ?」

「え?あっ、聖那……花咲聖那(はなさきせいな)」

「聖那か。なんか綺麗な名前だな」


そう言って、柔らかく微笑んだ彼の表情の方がよっぽど綺麗で見とれてしまいそうだ。


でも……名前を褒められるのはなんか嬉しいな。