「学校の近くに安いアパートが見つかんなくて。連れて行ってもらっても良い?ですか」
不自然につけた丁寧語は少し可愛くて微笑ましくもあったのだけど、顔には出さなかった。
「もちろん。一緒に行きましょう」
つくり笑顔。相手にはどう映ってるかな。
不自然じゃないかな。
 隣に並んで歩き始める。
あー、話題ないなぁー。
しばらく歩いてから、初めて口を開いたのは彼。
「小柳さん」
「あ、はい」
この人、なんの前触れもなくいきなり話しかけてくる。
「何年生?」
「高校1年生です」
「高校生なのはわかってるって。じゃあ、僕と同級生。タメでいいよ。」
と、少し笑ってから言った。
「年上かと思っちゃってた、高橋?くん。」
彼は私よりだいぶ背が高い。別に私が特別背が低いわけではない。
「よく言われる。実は180あってさ。まだ伸びてるんだ」
私より20センチくらい高い。
さすが、男子の成長は女子とは違うな。
「ところで高橋くんは、なんでこんな時期に編入なの」
最初から疑問に思っていたことだ。
今日は1月半ばの月曜日。
普通、編入なら新学期からとかでは。
「あぁ、ちょっとした事情があって。大したことじゃない。」
聞かないほうが良いことだっただろうか。
まあ、本人は気にしてなさそうだし、良いんだけど。