あ、そういえば、今日って数学のテストが…
「ねえ、君」
「うぇっ」
いきなり肩を叩かれたので、変な声が出た。
防犯ブザーを握りしめて振り返る。
そこにいたのは、黒髪の、同い年ぐらいの男子。
あ、私と同じとこの制服。
彼は私の足から胸上くらいまでをみて、
「あ、やっぱり。君、凰耀館の人?」
と言う。
「あぁ、はい。そうですけど」
私の言葉を聞くと彼はホッと胸を撫で下ろす。
「良かった、近くに同高の子がいて。
僕、凰耀館に編入する、高橋賢っていいます」
彼は改まって私に自己紹介をして、
よろしくお願いします、とお辞儀をした。
「あ、わ、私、小柳梨里です。もしかして、行き方わかりませんか?」
ちょっとびっくりしてたので、言葉がおかしくなってしまった。
彼は、フッと1回笑ってから、「そう」と微笑んだ。