「ではまずロングトーンから。やり方は知ってるよね。」
「アタックに気をつけて」
「あっ!音揺れてる!」
私の声が教室に響く。
ケンはほとんど喋らず、「はい」「うん」としか言わない。
 一時間の練習を終えて、一度お互いの休憩に入る。 
「いやー、小柳先輩スパルタね」
「そう?」
そんな気はさらさらなかったんだけど。
「私ってトロンボーンのことになると熱くなっちゃって」
「それだけトロンボーンの事が好きなんだね」
きりっと爽やかに笑う彼に、「そうかもね」と返す。