彼の楽器を見て、私は再び驚く。
何故なら…
「何その楽器!?高いやつじゃん!」
学生が持つ楽器じゃない。私の楽器はそこまで高価じゃない。彼の楽器は80万は超えてるはず…
「いいでしょ、誕生日プレゼントに貰っちゃった」
なんて高価な誕生日プレゼントだ…趣味で使う楽器じゃない…
「そういう小柳の楽器、銀色でカッコい」
指を指しながら言った。
「高橋のには及ばないよ」
「てか、いつの間に呼び捨てなの」
「そっちもね」
 こんなに高価な楽器を使っているのだ。技術面は期待できるのではないだろうか。
そんなありきたりなフラグをたてて…
「じゃあ、練習しようよ。高橋、基礎練していいよ」
「ありがと。ちょっと待ってて。マッピするから」
ぶーぶー …カチャ
マウスピースを楽器につけて、「はい」と、彼は笑みを浮かべながらこっちを向く。
「基礎。していいよ」
「今日はいいよ」
「そう、じゃあ、なんか吹いてよ」
楽器を構えて、彼は「なんか恥ずかしいな」と言う。「別に裸見るわけじゃないんだから」と促すと、息を吸って、唇をつけ、音を出した。
ンパーーーン
ンパーパンパンパンパンパンバンパー
静寂。