「えっと、僕はツグミ・オダ=メッテルニヒ。出身は日本という国で、ジャーマル人と日本人の血を引いています。歳は十八歳で……メッテルニヒ家の遠縁にあたる者です。今日は宰相閣下が皇帝陛下にお目通りしてくださって、皇帝皇后両陛下に謁見してまいりました」

「十八歳!? 僕よりちっちゃいのに僕より七歳も年上なの? てっきり同い年くらいかと思ったよ」

大きな目を真ん丸にして驚いた少年は、つくづくと興味深そうに私を上から下までジロジロと眺め尽くした。

これが他の人だったら失礼極まりないと思うところだけれど、この少年だとなんだか許せてしまう。あまりにも無邪気だからだろうか。

「日本……日本……なんだっけ、インドの島国だっけ? そこの国の人はみんなあんたみたいに小柄なの? そんなんじゃ立派な軍人になれなくない?」

「日本はインドじゃなくアジアですよ。清より東にある小さな島国です。僕は確かに小柄ですが、他の日本人は違います。ただ、長らく対外戦争がないので軍というものはありません」

「ええーっ!? 軍も戦争もないの!?」

今までこの手の質問は散々されたけれど、こんなに驚かれたのは初めてだ。少年は『信じられない』という表情のまましばらく固まり、まるで苦手な食べ物でも前にしたような苦々しい表情を浮かべた。