(か、可愛い……っ!! 弟にしたい! こんな可愛い弟に振り回されたい!!)

よく分からない庇護欲に掻き立てられながら、私も笑みを浮かべて頭を掻いて頷く。

「お、仰る通りで……。今日初めて本宮殿に来たんだけど、帰ろうとして迷っちゃいました……」

素直に迷子だと認めると、少年はますます楽しそうに顔を綻ばせた。

「あははっ、本当に迷子だったんだ! まあ、ここって無駄に広いしね。初めて来る人には分かりにくいかな」

そして軽く私の手を引くと、今度は少し得意そうに目を細めてみせた。

「僕が案内してあげる。そのかわり少し話し相手になってよ、ちょっと退屈してたんだ」

ひんやりとしてスベスベとした手に掴まれ誘導されながら、私は宮殿の廊下を歩きだした。

「何人? ウィーンじゃあまり見ない顔立ちだね。歳は? 出身地はどこ? どうして本宮殿に出入りできるの?」

よほど好奇心旺盛なのだろうか、少年は矢継ぎ早に質問してくる。