「別に構わないよ。葵ちゃんは妹みたいなもんだから」


痛みが酷くなるようなら連絡しておいで、と生徒の様に言い聞かせる相手に頷く。


「ごめん。本当に」


車内で彼が病院へ来た理由を聞かされ、それを思い出しながら頭を下げる。


「いいって。それよりも部屋まで送ろうか?」

「え?」

「あそこに顔つきのヤバい男がいるから」


あそこ彼処…と自分の後ろ側を指差す駿ちゃん。
私は、そっ…と彼の彼の体越しに前を覗き、あ…という口元のまま固まった。

そこにはキャメルカラーのジャンパーと膝が擦り切れたダメージジーンズを穿いてる男性が立っていて……。


「あれ、どっかで見た奴だよな。何処だっけ」


思い出せない感じの駿ちゃんに、こないだ一緒に居た相手です…と言えないくらいに、今泉君の表情は仏頂面。


「あんなのに関わるとメンドくさいよ。此処は部屋に戻らず、一旦実家へ行けば?」


タクシーに乗り直そう、と幼馴染は勧めてくるけど。


「ううん…いい。このまま部屋に行く」


逃げててもきっと同じ。
彼の方から此処へ来てくれたんなら、話をしてさっさと終わらせてしまった方がいい。