「ちょっと待ってろ」


そう言って走り去り、暫くその場には帰って来なかったんだけど__。



「お待たせ。帰ろう」


十分後くらいに戻ってきた彼は、送る…と言って腕を持ち上げ、起こされた私は彼の急な行動にビックリした。


「いい!別に胃が痛いだけだから」


治ったら帰る…と言っても信憑性は無いらしく。


「いいから送る」


頑として譲らず、歩かされるままタクシー乗り場まで連れて行かれた。

そして、実家に帰らないか?と誘われたけど、親を心配させるのも嫌で、マンションで平気だと言って断った__。




(……私、いつも肝心なところで押しに弱いな)


反省しつつ車窓に目を向けると、既にタクシーはワンルームマンションの下に着いていて。


「降りれるか?」


先に外へ出た駿ちゃんは顔を覗かせて訊ね、それにコクッと首を縦に振りながら、ズリズリとシートの上を滑って戸外へと降り立った。


「駿ちゃん、ごめんね、ありがとう」


凭れ掛からせてもらって楽だった…と言うと、彼は少しホッとした様に目尻を下げた。